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片頭痛の薬、頓用と予防どちらが正解?

脳疾患の解説  / 頭痛

片頭痛の薬、頓用と予防どちらが正解?

― リメゲパント(ナルティーク®)上市で治療は“選ぶ時代”へ

片頭痛の治療薬には、大きく分けて「頓用薬(急性期治療薬)」と「予防薬」という2つのカテゴリーがあります。

言葉としてはご存知でも、

  • ご自身はどちらを使うべきなのか
  • どのタイミングで予防薬の使用を考えるべきなのか
  • 今の治療は本当に合っているのか

と悩まれている患者さんは少なくありません。


2025年12月、日本でも片頭痛の治療薬であるリメゲパントが「ナルティーク®」という商品名で上市されました。
この新しい選択肢の登場は、単に治療薬が1つ増えたという話ではなく、
片頭痛治療を「頓用薬か予防薬か」という二択で考える時代から、「予防をしつつ頓用薬としても使える」薬剤が登場したことで、患者さんごとにライフスタイルに合った治療を選ぶ時代に入ったことを意味しています。

以前にも一度「頭痛―片頭痛の急性期治療と予防的アプローチ」というブログ記事で片頭痛に関して解説いたしましたが、本記事では、
薬の優劣を論ずるのではなく、
それぞれの薬の立ち位置と適応を整理し、テイラーメードの治療を一緒に考えることを目的に解説します。
リメゲパントは片頭痛治療におけるゲームチェンジャーになり得る可能性を持つ一方、薬価は高価(2025年11月収載時点において1錠2923.20で隔日内服の予防だけでも月約45,000円(3割負担で13,500円程度))です。また、処方期間も発売から最初の1年間は2週間までとなるため頻回の通院が必要となります。今回のブログではリメゲパントを含め、片頭痛治療を頓用薬と予防薬の2軸でまとめて行きます。________________________________________

この記事のまとめ

片頭痛治療には、
「頓用薬」と「予防薬」という2つの基本的な考え方があります。
頓用薬は「今起きている痛みを抑える」治療
予防薬は「頭痛そのものの頻度と強度を抑える」治療です。
それぞれに適している患者さん像と、同時に限界があります。
2025年12月に上市されたリメゲパント(ナルティーク®)は、
従来の枠組みでは説明しきれない「予防薬」でありながら「頓用薬」としても使用できる、という新しい位置づけを持つ薬です。

片頭痛治療においては、全ての方に同じように効果があり、かつ副作用がない万能薬があるわけではありません。
症状の強さ・頻度・生活背景に応じて、
片頭痛の治療を「組み立てる」視点を持つことが大切であると考えます。

下高井戸脳神経外科クリニックでは、
MRIによる画像診断を活用しながら、
患者さんと一緒におひとりおひとりの頭痛の性状とライフスタイルに適した片頭痛に対するテイラーメードの治療を考える姿勢を大切にします。

診療のご予約はこちらから
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下高井戸脳神経外科クリニックで出来ること

MRIを用いた安心できる頭痛診療

頭痛診療で最も大切なのは、
「本当に片頭痛として治療してよいか」を見極めることです。
脳腫瘍や脳血管障害などの原因がある二次性頭痛ではないか、それぞれの薬の禁忌に該当する頭蓋内の状況がないかをMRIでしっかり確認したうえで、片頭痛の治療に進みます。

片頭痛の診断

片頭痛はICHD-3(国際頭痛分類)に基づいて診断されます。
緊張型頭痛や群発頭痛など、
似ているが治療が異なる頭痛を正しく鑑別することが重要です。
診断が整理されることで、
「薬が効かない理由」「治療が噛み合わない理由」が見えてきます。

薬を押しつけない、選択肢を提示する診療

当院では、
頓用薬・予防薬を一度整理し、
患者さんのライフスタイルを踏まえた治療を提案します。
「効くかどうか」だけでなく、
「続けられるか」「不安が少ないか」も重要な判断材料です。
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片頭痛治療には「頓用薬」と「予防薬」があります

頓用薬とは何か

頓用薬(急性期治療薬)は、
片頭痛発作が起きたときに使う薬です。
代表的なものには、
NSAIDs(ロキソニンなど)やトリプタン製剤があります。
理想的な頓用薬とは、
服用後2時間以内に痛みが消え、その効果が24時間以上続くこと
(いわゆる One and Done)です。

予防薬とは何か

予防薬は、
片頭痛の頻度を減らし、1回あたりの痛みを軽くすることを目的とした薬です。
毎日内服する薬の他に注射薬(薬剤によって1-3か月に1度注射をします)
効果を評価するまでに数週間から数か月かかる場合もあります。
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頓用薬が向いている方・限界が出てくるタイミング

頓用薬で十分対応できるケース

  • 発作の頻度が少ない
  • 日常生活への影響が軽度
  • 頓用薬で毎回しっかり効果が出ている

このような場合は、頓用薬中心の治療で問題ありません。

頓用薬だけでは難しくなるサイン

一方で、次のような変化があれば注意が必要です。

  • 頓用薬の使用回数が増えてきた
  • 効きめが不安定になってきた
  • 薬を飲むこと自体に不安やストレスを感じる

特に頓用薬の服用回数が増えた状態が続くと、
薬剤の使用過多による頭痛(MOH)を招くリスクがあります。
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頓用薬(急性期治療薬)の具体例と使い分け

トリプタン系薬剤(片頭痛特異的治療薬)

代表例として、
スマトリプタン(イミグラン)、リザトリプタン(マクサルト)、
エレトリプタン(レルパックス)、ナラトリプタン(アマージ)などがあります。
これらは片頭痛に特化した治療薬で、
中等度から重度の発作に有効です。
それぞれ効果や効くまでの時間、効果が持続する時間に差があるため、おひとりおひとりの頭痛のタイプにより薬を選択します。
一方で血管収縮作用があるため、
心筋梗塞・脳梗塞の既往、コントロール不良の高血圧がある方には使用できません。
また、リザトリプタンはプロプラノロールとの併用に注意が必要です(リザトリプタンの血中濃度が上がります)。エレトリプタンは同様の理由でグレープフルーツジュースが飲めません。

NSAIDs・アセトアミノフェン

ロキソプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン(カロナール)などがあります。
軽度から中等度の発作に有効で、
アセトアミノフェンは小児や妊娠中でも比較的安全に使用できます。
ただしNSAIDsは、
胃潰瘍や重度の腎障害がある方、妊娠後期では使用できません。

ゲパント系薬剤(抗CGRP受容体拮抗薬)

リメゲパント(ナルティーク®)がこれです。
血管を収縮させないため、
トリプタンが使えない方や心血管リスクがある方にも検討できます。
強力なCYP3A4阻害薬との飲み合わせには注意が必要です。

ジタン系薬剤

ラスミジタン(レイボー)が該当します。
血管収縮作用はありませんが、
眠気やめまいが強く出るため、服用後8時間は運転できません。
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予防薬が向いている方・続けにくさの理由

予防薬を検討すべきケース

  • 片頭痛が月4回以上ある
  • 日常生活や仕事への影響が大きい
  • 頓用薬の使用回数が増えてきた

このような場合、片頭痛がQOL低下に及ぼす影響を鑑みて予防薬を検討します。

予防薬の課題

  • 副作用への懸念
  • 毎日内服する心理的負担
  • 効果実感まで時間がかかる

といった理由で、途中で中断される方も少なくありません。
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予防薬の具体例と使い分け

カルシウム拮抗薬

ロメリジン(ミグシス®)。
副作用が少なく、日本で開発された片頭痛専用予防薬です。

CGRP関連薬

注射薬(エムガルティなど)と、
飲み薬であるリメゲパント(ナルティーク)があります。
リメゲパントは予防薬でありながら頓用薬としても使用可能な薬剤です

抗てんかん薬

バルプロ酸(デパケン)、トピラマート(トピナ)など。
効果は強力で、早めに効果を自覚しやすいですが、
妊娠中や妊娠希望の方では使用し難い薬があります。

抗うつ薬(三環系)

アミトリプチリン(トリプタノール)。
不眠や緊張型頭痛を伴う方に有効ですが、
緑内障の方では使用できません。

β遮断薬

プロプラノロール(インデラル)など。
高血圧や不安傾向がある方に向いていますが、
喘息の方は使用できません。
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リメゲパントはどこに位置づけられる薬か

リメゲパントは、
「痛い時」と「予防」の両方に使用できる薬です。
効果の持続性に優れ、
MOHを起こしにくい可能性が示唆されている点も重要です。
1日1回1錠までしか内服できない薬なので既に予防薬として使用済みの日の発作には使用できないことに注意が必要です。
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片頭痛治療はテイラーメードで考える時代へ

片頭痛治療の薬剤には、選択肢が増えました。
「強い薬かどうか」ではなく「ライフスタイル」で決める時代です。
また、治療は一度決めたら固定しなくてはならないものではなく、
症状の変化に応じて見直してよいものです。
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よくあるご質問(Q and A)

頓用薬と予防薬は併用できますか?

はい、併用できます。
むしろ、片頭痛治療では頓用薬と予防薬を適切に組み合わせることが基本です。
予防薬は「頭痛を起こりにくくする」「回数や重症度を下げる」ための治療であり、
それでも起きてしまった発作に対して頓用薬を使います。
重要なのは、
• 頓用薬の使用回数が過剰になっていないか
• 予防薬が適切に効いているか
を定期的に見直すことです。
頓用薬だけに頼りすぎると、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)を招くことがあるため、
予防薬との併用は非常に重要な考え方です。
但しリザトリプタンとプロプラノロールのように、併用できない組み合わせもあるので注意が必要です。________________________________________

リメゲパントは毎日飲む薬ですか?

予防薬としては1日置きに内服する薬です
リメゲパント(商品名ナルティーク®)は、
• 予防薬として使用していない日に限り発作時の頓用薬として使うことも可能な薬ですが同日に予防薬として既に内服している場合には追加での内服はできません。________________________________________

リメゲパントを含むCGRP関連薬と、トリプタンや他の予防薬は併用できますか?

多くの場合、併用は可能です。
リメゲパントとトリプタンは作用機序が異なり、臨床試験では同日併用の安全性が確認されています。ただし、リメゲパント自体が頓用薬として十分な効果を持つため、実際には併用の必要性は少なく、医師が個別の状況に応じて判断します。どちらか一方で効果が不十分な場合の選択肢として、両方を持っておくことは可能です。
また、
β遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、カルシウム拮抗薬などの
従来の予防薬と併用することも可能です。
ただし、
• 強力なCYP3A4阻害薬を使用している場合
• 重度の肝機能・腎機能障害がある場合
には注意が必要なため、必ず医師に現在の内服薬を伝えてください。________________________________________

今使っている薬を中止する必要はありますか?

リメゲパントを検討する場合でも、
現在使っている頓用薬や予防薬をいきなり中止する必要はないことが多いです。
治療は、
• 効果
• 副作用
• 使用頻度
を見ながら、段階的に調整していきます。
「今の薬が合っていないかもしれない」と感じた場合は、
中止ではなく見直しのタイミングと考えてください。________________________________________

副作用はありますか?

どの薬にも副作用の可能性はありますが、
リメゲパントは比較的忍容性が高い薬とされています。
トリプタンのような血管収縮作用はありません。________________________________________

どのタイミングで受診すればよいですか?

次のような場合は、受診をおすすめします。
• 頭痛の回数や強さが増えてきた
• 頓用薬の回数が増えている
• 薬が効きにくくなってきた
• 日常生活や仕事に支障が出ている
• これまでと違うタイプの頭痛が出てきた
「我慢できるから大丈夫」ではなく、
治療を見直すことで生活の質が大きく改善することも多いのが片頭痛です。________________________________________

リメゲパントの治療にはいくらかかりますか?

リメゲパント(ナルティーク)は保険適用のある薬ですがその薬価は高価(2025年11月収載時点で1錠2923.20です。隔日に内服する予防目的の内服だけでも月約45,000円(3割負担で13,500円程度))です。また処方期間も発売から最初の1年間は2週間分までに限られます。また、30日間で最大18錠までの処方になります ________________________________________

受診をお考えの方へ

下高井戸脳神経外科クリニックは、東京都杉並区・世田谷区・渋谷区西部を中心に、京王線(下高井戸・明大前・桜上水・千歳烏山・上北沢・八幡山・芦花公園・笹塚・代田橋)、京王新線(幡ヶ谷・初台)、東急世田谷線(松原・山下・宮の坂)、小田急線沿線(代々木上原・東北沢・下北沢・世田谷代田・梅ヶ丘・豪徳寺)、渋谷区西部(上原・大山町・西原・本町)から通院しやすい立地にある脳神経外科専門クリニックです。
頭痛・めまい・しびれ・脳梗塞後の経過観察などを中心に、日本脳神経外科学会専門医である院長が、診察から検査結果の説明まで一貫して対応しています。
初診枠をご予約のうえご来院いただいた場合、症状と診察所見から医学的に必要と判断され、かつMRI検査の禁忌事項がない場合には、当日中にMRI検査および結果説明が可能です(土曜日も17時開始枠まで初診予約が可能です)。
詳しいアクセス方法は、サイト内のアクセス案内をご覧ください。
ご予約はこちらから。

参考文献

本記事は、片頭痛診療に関する国際的なエビデンスおよび日本の診療ガイドラインに基づいて作成しています。
特に、近年注目されている CGRP関連薬(リメゲパント〈商品名ナルティーク〉を含む) の位置づけについては、以下の主要文献を参考にしています。

  1. Croop R, Goadsby PJ, Stock DA, Conway CM, Forshaw M, Stock EG, Coric V, Lipton RB. Efficacy, safety, and tolerability of rimegepant orally disintegrating tablet for the acute treatment of migraine: a randomised, phase 3, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2019 Aug 31;394(10200):737-745. doi:10.1016/S0140-6736(19)31606-X.
  2. Croop R, Lipton RB, Kudrow D, Stock DA, Kamen L, Conway CM, Stock EG, Coric V, Goadsby PJ. Oral rimegepant for preventive treatment of migraine: a phase 2/3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2021 Jan 2;397(10268):51-60. doi:10.1016/S0140-6736(20)32544-7.
  3. Versijpt J, Paemeleire K, Reuter U, MaassenVanDenBrink A. Calcitonin gene-related peptide-targeted therapy in migraine: current role and future perspectives. Lancet. 2025 Mar 22;405(10481):1014-1026. doi:10.1016/S0140-6736(25)00109-6.
  4. Caronna E, Alpuente A, Torres-Ferrus M, Pozo-Rosich P. CGRP monoclonal antibodies and CGRP receptor antagonists (Gepants) in migraine prevention. Handb Clin Neurol. 2024;199:107-124. doi:10.1016/B978-0-12-823357-3.00024-0.
  5. 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン 2021.東京:医学書院;2021.
  6. Kung D, Rodriguez G, Evans R. Chronic Migraine: Diagnosis and Management. Neurol Clin. 2023 Feb;41(1):141-159. doi:10.1016/j.ncl.2022.05.005.
  7. Whealy M, Becker WJ. The 5-HT1B and 5-HT1D agonists in acute migraine therapy: Ergotamine, dihydroergotamine, and the triptans. Handb Clin Neurol. 2024;199:17-42. doi:10.1016/B978-0-12-823357-3.00008-2.
  8. Seng EK, Martin PR, Houle TT. Lifestyle factors and migraine. Lancet Neurol. 2022 Oct;21(10):911-921. doi:10.1016/S1474-4422(22)00211-3.
  9. McCracken HT, Thaxter LY, Smitherman TA. Psychiatric comorbidities of migraine. Handb Clin Neurol. 2024;199:505-516. doi:10.1016/B978-0-12-823357-3.00013-6.
  10. Tronvik E, Giri S, Young W. Preventive treatment of migraine: Non-specific oral agents. Handb Clin Neurol. 2024;199:67-86. doi:10.1016/B978-0-12-823357-3.00009-4.

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補足:参考文献について

本記事で解説している
• 頓用薬と予防薬の考え方
• トリプタン、NSAIDs、CGRP関連薬の位置づけ
• リメゲパント(ナルティーク)の有効性・安全性
• 片頭痛治療を「テイラーメード」で考える重要性
は、上記の国際的な臨床試験・総説論文・日本の診療ガイドラインを根拠としています。
医療情報は日々アップデートされますが、
現時点での標準的かつ信頼性の高い知見に基づいて整理しています。
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本記事の執筆者について

本記事は、下高井戸脳神経外科クリニック院長であり、
日本脳神経外科学会専門医・医学博士の 髙橋 里史 が執筆しています。

脳神経外科専門医としての臨床経験と、
国際的な総説論文・標準的教科書に基づき、
専門的な内容を一般の方にも分かりやすく整理しています。

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