群発頭痛(Cluster Headache)
群発頭痛(Cluster Headache)とは
群発頭痛は発作的に起こる非常に強い頭痛で、一次性頭痛(いわゆる「頭の中に頭痛の原因となる器質的疾患がないタイプの頭痛」)の中でも最も激しい痛みを伴うタイプです。
「三叉神経・自律神経性頭痛(さんさしんけい・じりつしんけいせいずつう)」に分類され、その中で最もよく見られます。
あまりの痛みの強さから、発作中に「頭を壁に打ちつけたくなるほど痛い」と表現される方もいるほどです。

群発頭痛の典型的な発作
激しい痛みと持続時間
痛みは必ず片側だけに起こり、主に目の奥・目の上・こめかみにかけて現れます。
患者さんはこの痛みを「眼球の奥を繰り返しつかまれるよう」「目をえぐられるよう」「こめかみが燃えるよう」「熱い針で刺されるよう」と表現することが多く、その強さは耐えがたいほどです。
治療をしない場合、1回の発作は15分〜3時間程度続きます。比較的短いものの、その間の苦痛は非常に強烈です。
発作時の行動と時間的な特徴
片頭痛のように静かな場所で横になるのではなく、群発頭痛では多くの方が落ち着かず動き回る・体を揺らす・頭を押さえて歩き回るといった行動をとります。このような強い焦燥感(しょうそうかん)は病気の特徴の一つです。また、発作は毎日ほぼ同じ時間帯に起こる傾向があり、特に夜間の睡眠中や早朝に出やすく、体内時計(概日リズム)と関係していると考えられています。
群発頭痛の病型と周期
群発頭痛は、発作が続く時期(群発期)と症状がまったく出ない時期(寛解期)の長さやくり返し方で分類します。およそ80%の方がエピソード性群発頭痛(ECH)で、10〜20%未満が慢性群発頭痛(CCH)です。
エピソード性群発頭痛(ECH)
群発期と寛解期が明確に区切られ、周期的に発作が繰り返されます。
- 群発期(発作の続く時期):発作が1日おき〜1日8回程度の頻度で短期間に集中して起こります。1回の群発期が継続する期間は7日〜1年と幅がありますが、もっとも多いのは4〜12週間(約1〜3か月)です。
- 寛解期(症状のない時期):発作がまったく起こらず、アルコールなどの群発頭痛を誘発する物質にも反応しなくなります。寛解期は3か月以上続き、数か月〜数年に及ぶこともあります。
エピソード性群発頭痛の方の多く(約80%)はこのままエピソード性群発頭痛の状態を保ちますが、約13%の方が後述の慢性型に移行すると報告されています。
慢性群発頭痛(CCH)
症状のない期間が短い、またはほとんどないタイプです。
- 活動期:ほぼ毎日発作が起こり、1年以上続くこともあります。
- 寛解期:症状が落ち着いても、3か月未満しか続かないのが特徴です。
群発期のリズム(いつ起きやすい?)
- 一日のリズム(サーカディアンリズム):発作は毎日ほぼ同じ時間に起こることが多く、夜間から早朝にかけて出やすくなります。特に午前2時頃に起こることが多いと報告されています。
- 季節のリズム(サーカアニュアルリズム):一年の中でも春と秋に発作が多く、特に10月前後にピークを迎える傾向があります。
群発頭痛に伴う症状
群発頭痛では、痛みと同じ側の顔に「自律神経症状」と呼ばれる変化がほぼ必ず現れます。
- 目の症状:充血、涙が出る、まぶたが腫れる
- 鼻の症状:鼻づまり、鼻水
- その他:瞳が小さくなる、まぶたが下がる(不完全なホルネル症候群)、顔の発汗
これらは三叉神経の刺激が脳の一部を活性化し、自律神経の働きが過剰になることで起こります。
群発頭痛の誘因や背景
- アルコール:群発期(発作の出る時期)には、少量の飲酒でも発作を誘発することがあり、群発頭痛の患者さんは自然と群発期には飲酒を避けるようになります。寛解期にはアルコールは頭痛の発症に影響しません。
- 喫煙:患者さんの約6割以上が喫煙者であり、発症が早まる、薬が効きにくくなるなどの関連が指摘されています。
- 睡眠不足:睡眠のリズムが乱れることも発作の誘因になります。入眠後1〜2時間で起こることが多いのも特徴です。
群発頭痛と片頭痛の違い
| 特徴 | 群発頭痛 | 片頭痛 |
|---|---|---|
| 痛みの強さ | 極めて強い(刺すよう・焼けるよう) | 中〜強い(ズキズキ) |
| 持続時間 | 15〜180分(平均約100分) | 4〜72時間 |
| 痛みの場所 | 片側固定(目の奥・こめかみ) | 片側または両側(前頭部〜側頭部) |
| 行動の特徴 | 落ち着かず動き回る、焦燥感 | 動くと悪化するため安静を好む |
| 自律神経症状 | 痛みのある側に必ず出る(涙・鼻づまり等) | 約半数に出るが両側で変動 |
| 光・音過敏 | 痛み側に偏る | 両側で強く出やすい |
| 発作頻度 | 群発期に1日おき〜1日8回 | 月15日未満(エピソード性) |
片頭痛のように吐き気や光・音過敏が出ることもありますが、痛みの持続時間・自律神経症状・発作中の焦燥感が群発頭痛を特徴づけるポイントです。
群発頭痛の治療
群発頭痛の治療は、発作を素早く止める発作時治療(急性期治療)と、発作を起こりにくくする予防治療の2つに分かれます。
発作時の治療(急性期治療)
- 酸素吸入:100%酸素を1分あたり7リットル(欧米では12〜15リットルが有効との報告もあり)で15分吸入します。副作用が少なく、心臓病がある方にも使える方法で、約6〜8割の方に効果があります。
- トリプタン製剤(スマトリプタンなど):スマトリプタンの皮下注射は最も速く効く治療法で、15分以内に痛みが軽くなることが多いです。スマトリプタンの鼻スプレーも有効ですが、注射より効果発現は遅めです。
発作を防ぐ治療(予防治療)
- ベラパミル(Verapamil):群発頭痛の第一選択薬です。開始前および長期継続時や投与量の変更時には、心電図で脈の異常がないかを定期的に確認する必要があります。
- ステロイド(コルチコステロイド):ベラパミルが効き始めるまでの「つなぎ治療」として短期間使用します。プレドニゾンを5日ほど服用し、その後ゆっくり減らします。
- ガルカネズマブ(Galcanezumab):CGRPという物質を抑える注射薬で、エピソード性群発頭痛に有効とされています。月に1回、300mgを皮下注射します(慢性型では効果は未確認です)が、現在日本では保険適応ではありません。
治療のイメージ(たとえで理解)
- スマトリプタン注射は「消防車」のように、現場に駆けつけて迅速・強力に火(痛み)を消します。
- 酸素吸入は「消火器」のように、安全で副作用が少なく、すぐに使える基本的な治療法です。特に心臓病などでトリプタンが使えない方にとって、非常に有効な手段です。
当院での診療体制とご案内
下高井戸脳神経外科クリニックでは、詳細な問診と診察、MRIによる二次性頭痛の除外を通じて群発頭痛の診断を行っております。
発作時の治療としては、スマトリプタンの皮下注射、点鼻、100%酸素吸入を行える治療体制を整えております。
スマトリプタンの皮下注射に関しては在宅自己注射の指導も可能で、条件を満たせば、ご自宅でご自身でスマトリプタンの皮下注射による群発頭痛の治療をして頂くことが可能です。
予防治療としてのベラパミルの処方も行っておりますが、投薬開始前と投与量増量時には必ず他クリニック(循環器内科)で心電図の評価を行って頂いております(2025年11月現在、下高井戸脳神経外科クリニックでは心電図の検査が出来ません)。
当院は東京都区部西部、京王線(千歳烏山、上北沢、八幡山)、東急世田谷線沿線(松原、山下、豪徳寺)、杉並区南部(下高井戸、永福、和泉、浜田山)、世田谷区北東部(赤堤、松原、羽根木、下北沢、梅が丘、代田)、渋谷区西部(笹塚、幡ヶ谷、代々木上原)からアクセス良好な地域の脳神経外科専門クリニックです。ご自身の頭痛が群発頭痛の特徴に当てはまるかもしれないと感じた場合は、いつもの頭痛だからと我慢されることなく、どうぞご相談ください。


