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頭痛・めまいと漢方薬 ②

脳疾患の解説  / 頭痛

頭痛・めまいと漢方薬
―②天気で悪化する頭痛に漢方は効く?
脳神経外科で使う頭痛治療としての漢方薬―
下高井戸脳神経外科クリニック

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はじめに
※本記事は全4回シリーズの第2回です。
• 第1回:日本で発展した漢方の歴史と、知っておきたい使い方
第2回:天気で悪化する頭痛に漢方は効く?(本記事)
• 第3回:「検査は異常なし」と言われためまいに―漢方薬を用いためまい治療
• 第4回:脳神経外科医が漢方を使う理由―頭痛・めまい・しびれ治療のまとめ
天気で悪化する頭痛や、検査では異常が見つからないにもかかわらず続く頭痛でお困りの方へ。

頭痛は、脳神経外科外来で最も多い症状のひとつです。
MRIなどの画像検査で、脳出血・腫瘍・脳梗塞といった重大な疾患を除外できたにもかかわらず、
• 痛みが繰り返す
• 鎮痛薬が効かない、あるいは効きすぎる
• 天気や体調で症状が大きく変動する
といった理由で、日常生活に支障を来している方は少なくありません。

そのような頭痛の一部では、
体内の水分バランスや冷え、自律神経の乱れが関与していると考えられ、
その調整を目的として 漢方薬が有効となるケースがあります。
本記事では、
• 天気で悪化する頭痛の考え方
• 実際に使われる漢方薬の種類
• どんな人に、どの漢方が効きやすいのか
• 安全性と副作用管理
について、エビデンスと実臨床を踏まえて解説します。
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下高井戸脳神経外科クリニックにおける頭痛に対する漢方薬の処方

下高井戸脳神経外科クリニックでは、片頭痛に対してはトリプタン、ジタン、CGRP関連薬に加え、塩酸ロメリジンやプロプラノロール、バルプロ酸などの予防薬を中心に処方しています。
緊張型頭痛に対しては、エペリゾンなどを用いながら生活背景も含めて整えていきます。
そのうえで、天候・体調変動や随伴症状(むくみ、冷え、吐き気など)が目立つ場合には、頭痛のタイプに応じて漢方薬をご提案することがあります。
漢方は西洋薬の代替ではなく、症状の背景にある体内環境を整えるための“追加の選択肢”として位置づけています。

ご予約はこちらから。
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目次

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脳神経外科で漢方を考慮する場面

当院では、以下の条件がそろった場合に漢方治療を検討します。
• MRIなどで器質的疾患が否定されている
• 天候・気圧・体調変動と頭痛が連動している
• 鎮痛薬だけではコントロールが難しい
• むくみ、冷え、吐き気、倦怠感などの随伴症状がある
漢方は
「頭痛を止める薬」ではなく、頭痛が起こりやすい体内環境を整える治療
として位置づけています。
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頭痛に対する漢方の使い分け
―「痛み」ではなく「背景」を診るという考え方―

漢方医学では、
頭痛という症状そのものだけを切り取るのではなく、
「なぜこの人に、このタイミングで頭痛が起きているのか」
という背景を重視します。
その際に用いられるのが、
「気・血・水」という体のバランスの考え方と、
その人の証(体質・症状の組み合わせ)です。
同じ「頭痛」でも、
• 水分の巡りが乱れている人
• 冷えが強い人
• ホルモン変動やストレスの影響が強い人
では、選ぶ漢方薬はまったく異なります。
ここでは、脳神経外科外来で実際に遭遇することの多いタイプを中心に、
頭痛に対する代表的な漢方薬の使い分けを解説します。
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①「水(すい)」の巡りを整える頭痛
― 五苓散・苓桂朮甘湯 ―

まず多いのが、
体内の水分バランスの乱れ(水毒・水滞)を背景とした頭痛です。
このタイプでは、
• 天気や気圧の変化で悪化する
• むくみやすい
• めまい・ふらつきを伴う
• 尿の量が減る、喉が渇く
といった特徴がみられます。
● 五苓散(17番)
五苓散は、
「水の偏りそのもの」を整える代表的な処方です。
• 喉が渇く
• 尿量が減っている
• むくみ、二日酔い、めまいを伴う
• 気圧変化で頭痛が出る
といった場合に選択されます。
アクアポリン(水チャネル)への作用が示唆されており、
「頭痛が来そうなタイミングで飲む半頓用」という使い方も、
理にかなった方法と考えられています。
なお、甘草を含まないため、
副作用の点でも比較的使いやすい処方です。
● 苓桂朮甘湯(39番)
同じく水の巡りが関与しますが、
五苓散よりも
• めまい
• ふらつき
• 立ちくらみ
• 動悸(胸のドキドキ)
が前面に出る場合に選ばれます。
「頭が重い」というより、
体がフワフワする感覚と頭痛が同時に出るような方に向いています。
ただし、1日量中に甘草2.0g相当のエキスを含むため、
他の甘草含有製剤との併用には注意が必要です。
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②「冷え」と「激しい痛み」を伴う頭痛
― 呉茱萸湯 ―

次は、
冷えを背景とした片頭痛(偏頭痛)です。
このタイプでは、
• 手足が冷えやすい
• 吐き気・嘔吐を伴う
• ズキズキする拍動性の痛み
• 繰り返し起こる(習慣性)
といった特徴があります。
● 呉茱萸湯(31番)
呉茱萸湯は、
冷えを改善しながら、頭痛の反復を抑える処方です。
• 体力は中等度以下
• 冷えが強い
• 激しい吐き気を伴う頭痛を繰り返す
といった場合に選ばれます。
慢性頭痛の診療ガイドラインでも
推奨度B(使用を推奨する)と評価されており、
トリプタン系薬剤と併用されることも非常に多い漢方薬です。
なお、呉茱萸湯は
はっきりと苦味の強い漢方薬ですが、
これは体を内側から温め、巡りを動かす作用によるものです。
甘草は含まれていません。
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③「血(けつ)」と女性特有のリズムが関与する頭痛
― 加味逍遙散・桂枝茯苓丸 ―

女性の頭痛では、
• 月経周期
• 更年期
• ストレス
• 自律神経の乱れ
が複雑に関与することが少なくありません。
このような場合、
血流の滞り(瘀血)や気の巡りを整える処方が選ばれます。
● 加味逍遙散(24番)
• 体力が虚弱
• 肩こり、疲れやすさ
• イライラ、不安、不眠
• 更年期症状を伴う
といった方に向いています。
「頭痛+気分の波」がセットになっている場合の
第一選択の一つです。
1日量中に甘草1.5g相当のエキスを含むため、
長期服用時には副作用に注意します。
● 桂枝茯苓丸(25番)
• 比較的体力がある
• のぼせや赤ら顔
• 肩こりが強い
• 下腹部の張り(抵抗感)
がある方に向いています。
月経関連頭痛や、
血流の滞りが強いタイプに選ばれます。
甘草は含まれていません。
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頭痛に対する漢方の使い分けまとめ

処方名 主な背景 判断のポイント 甘草
五苓散 水の偏り 喉の渇き、尿量減少、気圧変化 なし
苓桂朮甘湯 水+自律神経 めまい、動悸、ふらつき あり
呉茱萸湯 冷え 激しい吐き気、習慣性片頭痛 なし
加味逍遙散 気・血 イライラ、不安、更年期 あり
桂枝茯苓丸 血の滞り のぼせ、赤ら顔、月経関連 なし

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服用にあたっての重要な考え方

漢方薬は、
「自然由来だから安全」ではありません。
特に、
• 甘草を含む処方の重複
• 利尿薬などの西洋薬との併用
には注意が必要です。
手足の脱力感、むくみ、血圧上昇などがあれば、
速やかに医師・薬剤師へ相談してください。
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この章のまとめ

― 頭痛を「土壌」から整えるという発想 ―
漢方による頭痛治療は、
痛みという結果ではなく、その根っこにある体質を整える治療です。
例えるなら、
• 水が溜まれば排水を整え
• 冷えれば温め
• 巡りが悪ければ流れを作る
というように、
その人の「土壌」に合わせた手入れを行うイメージです。
鎮痛薬だけでは繰り返してしまう頭痛に対して、
漢方はもう一段深いレベルから関わる選択肢になり得ます。
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五苓散はどんな頭痛に効く?

物語形式の典型症例 ①
40代女性。会社員。
「雨が近づくと、決まって頭が重くなるんです。」
そう話されて来院されました。
普段は仕事も家事もこなしていますが、
低気圧が近づく前日から、
• 頭全体がじわっと重くなる
• 立ち上がると軽くふらつく
• 夕方になると顔や足がむくむ
• 朝よりも午後の方がつらい
といった症状が繰り返し出現していました。
片頭痛のようなズキズキした強い痛みではなく、
「鎮痛薬を飲めば何とかなるけれど、根本的には楽にならない」
というタイプの頭痛です。
MRI検査では、脳出血・脳梗塞・腫瘍などの明らかな異常は認めませんでした。
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診察で着目したポイント
この方の場合、
• 症状が天気(気圧)に強く連動している
• 頭痛と同時にむくみ・ふらつきを伴う
• 痛みそのものより「重さ・だるさ」が前面に出ている
といった特徴がありました。
これらは、漢方医学でいう
「水毒(水滞)」――体内の水分バランスの乱れ
が前面に出た状態と考えられます。

天気で悪化する頭痛とは?
―気圧・水分・自律神経の関係
低気圧や天候不良時には、
• 自律神経の調整機能が不安定になる
• 体内の水分分布(むくみ)が変化する
と考えられています。
この結果、
• 頭が重い
• 締めつけられる
• フワフワする
• ズキズキするが拍動は強くない
といった頭痛が出現・増悪することがあります。
西洋医学的には
• 片頭痛
• 緊張型頭痛
• それらの混合型
と診断されることが多い一方で、
「天気との連動性」そのものは治療選択に反映されにくいのが現状です。

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五苓散を選択する理由
五苓散は、
• 体内の水分の偏りを整える「利水作用」を持つ
• 水分過多の状態では尿量を増やす一方、正常時には過剰に作用しない
• 「頭痛」「めまい」といった症状が、添付文書上も効能として明記されている
という特徴を持つ漢方薬です。
近年では、
五苓散が脳内の水の通り道であるアクアポリン4(AQP4)の働きを調整し、
水分の過剰な停滞を抑えることが分かってきています。
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「天気予報に合わせて飲む」という使い方(半頓用)
この方には、
• 頭痛が強くなってから毎日飲み続ける
のではなく、
• 「天気が崩れそうだと感じた前日〜当日」に服用する
• 症状が出やすい時期は数日間だけ続けて服用する
という、いわゆる
半頓用(予防的・頓服的服用)
をご提案しました。
これは、
• 気圧変化によって水分バランスが崩れ始める「前兆」の段階で
• 五苓散が水分の偏りを先回りして調整する
という、漢方の「未病(発症前の不調)」を治す考え方に基づいています。
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経過
数週間後、再診時にこう話されました。
「雨の日でも、前ほど頭の重さが気にならなくなりました。
鎮痛薬を飲む回数も減っています。」
天候に振り回されていた生活リズムが、
少しずつ安定してきた様子でした。
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この症例から分かること
五苓散は、
• 強い拍動性頭痛を抑え込む薬ではありません
• 体内の水分バランスが乱れることで生じる
「重い・だるい・むくむ」タイプの頭痛
に適しています。
また、
• 飲み続けることだけが正解ではなく
• 症状が出る「前」に使う
という点も、五苓散の大きな特徴です。
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例えるなら
五苓散の服用は、
「大雨の前に排水溝を掃除しておくこと」に似ています。
雨(気圧変化)が降ってから
慌てて水をかき出す(鎮痛薬を飲む)のではなく、
あらかじめ排水の流れ(アクアポリン)を整えておくことで、
体内の「浸水(むくみによる頭痛)」を防ぐ。
五苓散は、そうした先回りの調整を得意とする漢方薬です。
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呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は、どんな頭痛に使われるのか
― 冷えと習慣性片頭痛を軸に考える ―

物語形式の典型症例 ②
40代女性。
デスクワーク中心の仕事で、肩こりと冷え性が昔からある。
「頭痛は昔からあるんですが、最近は“頭痛が来る予感”が分かるんです。」
・月に2〜3回
・ズキズキと拍動性
・吐き気が強く、横になると少し楽
・冬場や冷房の効いたオフィスで悪化
・手足がいつも冷たい
発作が起きるとトリプタンは効く。
ただし、
「薬は効くけど、また次が来るのが怖くて…」
MRIでは明らかな異常なし。
神経学的にも問題はありません。
詳しく話をお伺いすると、
・胃腸が弱く、朝は食欲が出にくい
・冷えると頭痛が誘発されやすい
・発作が“習慣化”している
という特徴がありました。
この方の頭痛は、
血管や神経の興奮だけでなく、「冷え」を背景に繰り返されている片頭痛
と判断し、呉茱萸湯を提案しました。
「正直、すごく苦いですね…」
と最初は驚かれましたが、
数週間後、
「頭痛の回数自体が減ってきました。
トリプタンを使う頻度も減っています。」
と変化が出てきました。
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呉茱萸湯が向いている頭痛のタイプ
呉茱萸湯は、
「冷えを伴う習慣性片頭痛」に適した漢方薬です。
特徴をまとめると、
• 片頭痛を繰り返す(習慣性・慢性化傾向)
• 吐き気・嘔吐を伴いやすい
• 手足が冷えやすい
• 体力は中等度以下
• 胃腸が弱いことが多い
といった方に選ばれます。
日本の
「慢性頭痛の診療ガイドライン」でも、
呉茱萸湯は慢性頭痛に対して
推奨度B(使用を推奨する)と評価されています。
なお、呉茱萸湯は
はっきりと苦味の強い漢方薬です。
これは欠点ではなく、
体を内側から温め、気血の巡りを動かす生薬特有の性質によるものです。
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トリプタンとの関係
― どちらか一方ではない ―
ここでよくある疑問が、
「トリプタンがあるなら、漢方はいらないのでは?」
という点です。
結論から言うと、
役割がまったく異なります。
• トリプタン
→ 起きてしまった強い頭痛発作を
その場で抑える薬
• 呉茱萸湯
→ 頭痛が起きやすい体質そのものを整える薬
例えるなら、
• トリプタンは
「今燃えている火を消す消火器」
• 呉茱萸湯は
「火がつきにくい家に変える改修工事」
です。
実臨床では、
• 発作時:トリプタン
• 予防・体質改善:呉茱萸湯
という併用が非常に多く行われています。
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片頭痛予防薬(ミグシス・バルプロ酸)との位置づけ
片頭痛の予防には、
• ミグシス(ロメリジン)
• バルプロ酸
といった西洋薬もよく用いられます。
これらは、
• 血管や神経の過剰な反応を抑える
• 科学的に定義された標的に
ピンポイントで強く作用
するのが特徴です。
一方、呉茱萸湯は、
• 冷え
• 胃腸虚弱
• 全身のバランス
といった背景要因を含めて整える薬です。
そのため、
• 西洋薬が体に合わない場合
• 副作用が問題になる場合
• 体質的な冷えが強い場合
には、
呉茱萸湯が「代わり」に使われることもあります。
また、
• ミグシスで頻度は減ったがゼロにならない
• 体調の波が大きい
といった場合に、
漢方を併用して安定性を高めるという使い方も一般的です。
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この章のまとめ
― 呉茱萸湯は「苦いが、理にかなった薬」 ―
呉茱萸湯は、
• 冷えを伴う
• 吐き気の強い
• 繰り返す片頭痛
に対して、
体質の土台から整える予防薬です。
トリプタンやミグシスと競合する薬ではなく、
役割の異なる治療手段として組み合わせることで、
片頭痛治療の選択肢を広げてくれます。
「効くけれど、また来る」
その繰り返しに悩んでいる方にとって、
呉茱萸湯は一つの現実的な選択肢になり得ます。
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すべての漢方に共通する安全性の考え方
• 「天然=安全」ではない
• 少量・必要最小限から開始
• 効果がなければ見直す
• 甘草含有製剤では電解質異常に注意
当院では、
漫然投与は行わず、薬の効果をご一緒に評価致します。
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本記事の結論

• 天気で悪化する頭痛には、体内環境の乱れが関与していることがある
• 五苓散は「水分バランス型」の頭痛に適する
• 呉茱萸湯は「冷え+吐き気を伴う片頭痛様頭痛」に適する
• 呉茱萸湯は苦味が強く、事前説明が重要
• 漢方は脳神経外科診療の中で、安全管理のもと用いる治療戦略である

Q and A

天気が悪いと頭痛が出るのは、気のせいではないのですか?

気のせいではありません。
低気圧や天候の変化により、自律神経のバランスが乱れたり、体内の水分分布が変化したりすることで、頭痛が誘発・増悪することがあります。
特に「頭が重い」「むくむ」「ふらつく」といった症状を伴う場合、体内環境の変動が関与している可能性があります。

MRIで異常がないのに、なぜ頭痛が続くのですか?

MRIは脳出血や腫瘍などの器質的疾患を除外するための検査です。
一方で、片頭痛や緊張型頭痛、天候関連頭痛の多くは画像に異常が写らない機能的な頭痛です。
「異常がない=つらさが軽い」という意味ではありません。

漢方薬は鎮痛薬の代わりになるのですか?

基本的には代わりではありません。
鎮痛薬やトリプタンは「起きてしまった痛み」を抑える薬、
漢方薬は「頭痛が起きやすい体内環境」を整える薬です。
実際の診療では、両者を目的に応じて使い分けたり、併用したりします。

五苓散はどんな頭痛に向いていますか?

五苓散は、
・天気や気圧で悪化する
・頭が重い、だるい
・むくみやふらつきを伴う
といった水分バランスの乱れが前面に出た頭痛に向いています。
拍動性の強い片頭痛を止める薬ではありませんが、
「重さ・だるさ」を背景から整えるのが得意な処方です。

五苓散は毎日飲み続ける必要がありますか?

必ずしも毎日飲み続ける必要はありません。
症状が出やすい時期や、天気が崩れそうなタイミングに合わせて服用する
「半頓用(予防的・頓服的な使い方)」が適している場合もあります。
服用方法は症状や生活リズムに合わせて調整します。

呉茱萸湯はどんな片頭痛に使われますか?

呉茱萸湯は、
・手足が冷えやすい
・吐き気や嘔吐を伴う
・ズキズキする拍動性の痛み
・繰り返し起こる習慣性片頭痛
といった特徴がある方に向いています。
特に「冷え」が強い場合に選択されます。

呉茱萸湯は苦いと聞きましたが大丈夫ですか?

はい、はっきりと苦味のある漢方薬です。
ただしこれは欠点ではなく、体を内側から温め、巡りを動かす生薬の性質によるものです。
多くの方が数日〜1週間程度で慣れていきます。

トリプタンを使っているなら、呉茱萸湯はいりませんか?

役割が異なるため、どちらか一方に絞る必要はありません。
・トリプタン:今起きている強い発作を抑える
・呉茱萸湯:頭痛が起きにくい体質へ整える
という関係です。
実臨床では併用されることが非常に多いです。

片頭痛予防薬(ミグシスやバルプロ酸)と漢方はどう違いますか?

ミグシスやバルプロ酸は、神経や血管の過剰な反応を抑えるピンポイントな予防薬です。
一方、漢方薬は冷え・水分バランス・胃腸の弱さなど、背景要因も含めて整えることを目的とします。
体質や副作用の状況によって、代替や併用が検討されます。

漢方薬は安全なのですか?

「天然だから安全」というわけではありません。
特に甘草を含む処方では、むくみや血圧上昇、低カリウム血症などの副作用に注意が必要です。
当院では少量から開始し、効果と安全性を必ず再評価します。

どんな場合に受診した方がよいですか?

・頭痛の性質が急に変わった
・今までにない激しい頭痛
・麻痺、しびれ、言葉のもつれ、発熱を伴う
場合は、漢方以前に速やかな医療評価が必要です。
そのうえで、慢性的な頭痛に対して漢方を検討します。

漢方は「最後の手段」なのでしょうか?

いいえ。
漢方は「西洋薬が効かなかったときの最後の選択」ではなく、
頭痛のタイプや背景に応じて組み合わせる治療戦略の一つです。

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参考文献

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本記事の執筆者について

• 本記事は、下高井戸脳神経外科クリニック院長であり、
日本脳神経外科学会専門医・医学博士の 髙橋 里史 が執筆しています。
国際的な総説論文・標準的教科書に基づき、
専門的な内容を一般の方にも分かりやすく整理しています。

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