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可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)

脳疾患の解説

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)とは
〜繰り返す突然の激しい頭痛、その正体〜

頭の中で突然、雷が鳴るような激しい頭痛。
このような痛みを医学的には「雷鳴頭痛」と呼びます。

脳神経外科の診察で「突然の激しい痛みですか?」という質問に「はい」と答えられると、医師は緊張感をもって対応します。なぜなら、このような雷鳴頭痛の中には高率で命に関わるくも膜下出血が含まれるからです。
しかし、雷鳴頭痛の原因はくも膜下出血だけではありません。

その原因のひとつに、可逆性脳血管攣縮症候群(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome:RCVS)があります。

RCVSは、脳の血管が一時的に強く縮んでしまうことで起きる病気です。発症しても多くの方は3か月以内に自然に回復しますが、経過中に脳梗塞くも膜下出血を起こすことがあり、注意が必要です。


RCVSの典型的なエピソード

RCVSの最大の特徴は、「突然の、人生で最悪の頭痛」を繰り返すことです。痛みは数秒〜1分以内にピークに達します。

エピソード1:行動が引き金になるタイプ

中年女性に多い傾向がありますが、どなたにも起こりえます。
約8割の患者さんで何らかのきっかけがあります。

  • 排便や咳など「いきむ」動作
  • 激しい運動
  • 強いストレス
  • 熱いお風呂やシャワー
  • 急に体をかがめる姿勢
  • 性行為

これらの行動の直後に「ズドーン!」と響くような頭痛が出て、数日〜数週間にわたり何度も繰り返します。
平均して経過中に5回ほどの激しい頭痛を経験し、通常は2〜3週間で自然に落ち着きます。

エピソード2:薬が引き金になるタイプ

RCVSの半数以上は、血管に作用する薬や物質が関係しています。
代表的なものは以下の通りです。

  • 抗うつ薬の一種(SSRIなど)
  • 鼻づまりの薬(交感神経刺激薬)

こうした薬を使用していた方が激しい頭痛を繰り返し、数日〜2週間後に手足の麻痺言葉のもつれを起こすことがあります。MRIで「分水嶺領域」に小さな脳梗塞が見つかり、MRAで血管がまだらに細くなっていれば、薬剤性RCVSが疑われます。
このタイプはやや重症化しやすく、後遺症を残すこともあります。


病気の仕組み

RCVSの原因はひとつではありませんが、脳血管の自律的なコントロールが一時的に失われる状態と考えられています。
交感神経が過剰に働くことで血管が急激に縮み、血流が乱れます。
このとき血管が「ビクッ」と縮むことで脳の表面の神経が刺激され、雷鳴頭痛が起こるのです。

発作時には血圧が急に上がることも多く、収縮期160mmHgを超える例もあります。


合併症:脳梗塞や出血

RCVSでは、以下のような合併症が起こることがあります。

出血性(発症後1週以内に多い)

  • 軽いタイプのくも膜下出血(皮質性くも膜下出血)
  • 脳内出血(皮質下の小出血)

虚血性(発症2週目ごろに多い)

  • 分水嶺領域の脳梗塞(血管が細くなり酸素が届かなくなるため)

画像の特徴と時間経過

RCVSの画像所見は、発症からの時間によって大きく変化します。

  • 発症初期(1週以内):半数以上で異常なし
  • 2〜3週目:血管が数珠状に細くなり(string of beads)、MRAで最も明瞭に見える
  • 3か月以内:血管が自然に回復し、可逆性を確認できる

初診時に異常がなくても否定はできず、2〜3週間後の再検査が重要です。


治療と生活上の注意

RCVSに対する確立された治療法はありませんが、早期発見と安静が最も大切です。

  1. 誘因の回避
    激しい運動、いきむ動作、熱い入浴、ストレス、性行為などはしばらく控えます。
    交感神経を刺激する薬、トリプタン、特定の抗うつ薬などは一時的に中止します。
  2. 薬物治療
    カルシウム拮抗薬(ロメリジンやベラパミル)を用いることで、頭痛が軽減する場合があります。
  3. 避けるべき薬
    ステロイド(副腎皮質ホルモン)はRCVSを悪化させる可能性があり、原則使用しません。
    血管収縮作用のある片頭痛薬(トリプタン、麦角製剤)も避けます。

経過と予後

RCVSは多くの方で自然に回復します。

  • 一般的には激しい頭痛は2〜3週間で消失し、
  • 血管形態は3か月以内に正常化します。
  •  
  • 経過中の脳卒中による永続的な後遺症の発症リスクは3〜6%、死亡例はまれと報告されています。

再発率も約8%と低く、多くの方が良好な経過をたどります。


まとめ

RCVSは、繰り返す雷鳴頭痛と一時的な血管攣縮を特徴とする疾患です。
発症初期の画像検査では異常がなくても、時間をおいて再検査することが正しい診断につながります。

多くの患者さんは自然に回復しますが、まれに脳梗塞や出血を伴うこともあります。
したがって、疑われた場合は誘因となる行動を控え、安静に過ごすことが重要です。

RCVSは、時間軸に沿って診察と画像診断を繰り返すことで正しく診断できる疾患です。
多くの方は予後良好ですが、経過中の脳卒中リスクを減らすためにも、医師にご相談のうえ慎重な経過観察をされることをお勧めします。


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