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思春期の頭痛|成長期に多い片頭痛に対するアプローチ

脳疾患の解説  / 頭痛

思春期の頭痛|成長期に多い片頭痛に対するアプローチ

―「小児は小さい大人ではない」から考える、思春期の頭痛診療―

思春期は、身体的・心理的・社会的な変化が同時に起こる、不安定な時期です。
この時期に出現する頭痛、とくに片頭痛は、単なる「頭が痛い」という症状にとどまらず、学業、友人関係、家庭生活など、日常生活のあらゆる側面に大きな影響を及ぼす可能性があります。

一方で、
「成長期だから仕方がない」
「そのうち治るだろう」
と見過ごされてしまうケースも少なくありません。

医学の世界には
「Children are not small adults(小児は小さい大人ではない)」
という格言があります。
これは頭痛診療においても例外ではなく、思春期の片頭痛は、成人の片頭痛とは異なる特徴と治療上の注意点を持っています。

本記事では、国際的なエビデンスと日本の診療ガイドラインに基づき、
思春期における片頭痛の特徴、誘発要因、治療の考え方、生活指導、学校生活との向き合い方について、整理します。

(本記事は2026年1月5日に一部内容を修正しております。)

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この記事のまとめ

  • 思春期の片頭痛は、この時期特有の身体的・心理的・社会的要因が複雑に関与する疾患です
  • 成人の片頭痛とは、痛みの部位・持続時間・症状の表れ方が異なります
  • 治療では「小児は小さい大人ではない」という視点が不可欠です
  • 薬物療法だけでなく、生活習慣・学校環境・心理社会的側面を含めた包括的アプローチが重要です
  • 下高井戸脳神経外科クリニックでは、中学生以上(12歳以上を目安)の頭痛相談に対応し、MRIを用いた評価と個別化した治療提案を行っています

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下高井戸脳神経外科クリニックでできること

当院では、思春期(目安として中学生以上)の頭痛について、以下の方針で診療を行っています。鎮静することなくMRIで器質的疾患の除外が可能となる年齢のみを対象とさせて頂いております。

  • 中学生(12歳以上が目安)からの頭痛相談に対応
  • 問診と神経学的診察を重視した評価
  • MRIによる二次性頭痛(脳腫瘍・水頭症・血管病変など)の除外
  • CTは設置しておらず、画像評価はMRIのみになります
  • 当院では20歳未満の方に対するMRI検査目的の鎮静を行うことは出来ません(安全確保の観点から)
  • 発熱や感染症を伴う頭痛は、小児科(15歳未満)ないし内科(15歳以上)の受診をご検討下さい
  • 学校生活・受験期を含めた生活背景を考慮した治療提案
  • 未成年の患者様の受診は原則保護者様とご一緒にお願いします

「検査をするための受診」ではなく、
治療と生活を一緒に整えるための受診となるように考えています。
受診予約はこちら

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目次

思春期の片頭痛の特徴 ― 成人との違い

片頭痛の有病率は年齢とともに上昇し、
5〜10歳で約5%、10代後半では約15%に達します。
14歳未満では男女差はほとんどありませんが、
思春期以降は女子の罹患率が急増し、成人と同様に女性が男性の約3倍になります。
この変化には、性ホルモン(特にエストロゲン)の影響が深く関与しています。

また、成人では片側性が典型とされる片頭痛ですが、
思春期を含む小児では前頭部〜側頭部の両側性の痛みが多くみられます。
持続時間も成人(4〜72時間)より短く、
2〜72時間で軽快するケースが少なくありません。

ホルモン変化と片頭痛(特に女性)

思春期は、エストロゲンを中心とした性ホルモンの分泌が大きく変動する時期です。
初経前後をきっかけに、片頭痛が初めて出現したり、悪化したりすることがあります。
月経周期に伴うエストロゲンの低下は強力な誘発因子であり、
月経関連片頭痛では、

  • 痛みが強い
  • 持続時間が長い
  • 頓用薬が効きにくい

といった特徴がみられます。

生活リズム・環境ストレスの影響

思春期には生理的に睡眠相が後退し、夜更かし型になります。
一方で学校の始業時間は早く、慢性的な睡眠不足や週末の寝溜めが起こりやすくなります。

さらに、

  • 学業・受験のプレッシャー
  • 友人関係等のストレス
  • スマートフォンの使用やゲームによる過度なスクリーンタイム

といった要因が重なり、脳の過敏性が高まり、片頭痛が頻発・慢性化します。

思春期の片頭痛治療 ― 包括的アプローチ

思春期の片頭痛治療は、
薬物療法・生活習慣指導・心理的配慮を組み合わせた包括的アプローチが基本です。

急性期治療薬(頓用薬)

イブプロフェン:安全性・有効性ともに高い 
アセトアミノフェン:安全性は高いが、効果はやや弱い

トリプタン系(鎮痛薬で効果不十分な場合に検討)
【重要な注意事項】
本記事で紹介しているトリプタン系薬剤は、日本において小児・思春期への正式な適応を持っていませんが、『頭痛の診療ガイドライン2021』に基づき、適応外使用として処方されることがあります。
適応外使用であっても、ガイドラインに基づく医学的に妥当な使用であれば保険診療での処方が可能です(厚生労働省通知に基づく)。
処方に際しては、保護者と本人に適応外使用であることを含め十分な説明を行った上で使用されます。

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予防薬の整理 ― 使いやすい薬・使いにくい薬

思春期で比較的使いやすい薬

思春期の片頭痛予防においては、成長段階にある脳や心身への影響を考慮し、
安全性が高く、副作用の少ない薬剤を優先することが重要です。

ロメリジンは、
副作用が比較的少なく、思春期の片頭痛予防薬として使いやすい選択肢と考えられます。


注意が必要な薬(慎重に使用)

一方で、思春期では慎重に検討し、十分な説明のもとで使用すべき薬剤も存在します。

アミトリプチリンは、
少量から開始することで、不眠や緊張型頭痛を伴う症例に有効とされてきました。
しかし、思春期では有効性・安全性の両面から慎重な判断が求められます。

プロプラノロールは、
片頭痛予防薬として広く使用されてきた薬剤ですが、
喘息を合併している場合は禁忌となるため注意が必要です。

トピラマートは、
12歳以上で使用が検討されることがありますが、
認知機能低下や感覚異常といった副作用に十分注意する必要があります。

バルプロ酸は、
催奇形性の問題があるため、思春期女子では原則として避けるべき薬剤です。

✓補足:CHAMP試験(NEJM 2017)を踏まえた注意点

2017年に New England Journal of Medicine に報告された
CHAMP試験(Childhood and Adolescent Migraine Prevention Trial)は、
小児・思春期片頭痛の予防治療を考える上で非常に重要な研究です。

この試験では、8〜17歳の小児・思春期片頭痛患者を対象に、
アミトリプチリン、トピラマート、プラセボを比較検討しました。

その結果、
頭痛日数の改善は、アミトリプチリンおよびトピラマートのいずれにおいても、
プラセボと比較して有意な差は認められませんでした。

一方で、
アミトリプチリンでは倦怠感や気分変調、
トピラマートでは感覚異常や認知機能への影響といった、
副作用は有意に多く認められました。

これらの結果から、
CHAMP試験の対象年齢である8〜17歳の思春期患者においては、
アミトリプチリンおよびトピラマートを ルーチン に推奨できる予防薬とは言い難い

と考えられます。

非薬物療法

小児・思春期の片頭痛の管理においては、
薬物療法だけでなく、ライフスタイルの改善や心理社会的側面を考慮した包括的なアプローチ(非薬物療法)が非常に重要です。

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非薬物療法①|ライフスタイルの改善と自己管理

規則正しい生活習慣を維持することは、
脳の過敏性を抑え、発作の頻度を減らすための「治療の土台」となります。

  • 睡眠衛生の改善
    十分かつ規則正しい睡眠時間を確保し、週末の寝溜めなど不規則な睡眠パターンを避けます。
  • 規則正しい食事と水分補給
    欠食(特に朝食)を避け、1日3食を規則正しく摂取すること、水分をこまめに補給することが重要です。
  • 定期的な運動
    座りっぱなしの生活を避け、無理のない運動や屋外活動を取り入れます。
  • スクリーンタイムの制限
    スマホやゲームは45〜60分ごとに休憩を入れ、就寝前の使用は控えます。

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非薬物療法②|発作時の環境調整

発作が起きてしまった場合、
薬の服用と並行して環境を整えることで苦痛を最小限に抑えられます。

  • 強い光や騒音を避け、
    「暗くて静かな部屋」(保健室や自宅の寝室)で休息
  • 可能であれば短時間の睡眠をとる

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非薬物療法③|栄養補助食品(サプリメント)

副作用が少ないことから、予防的な選択肢として考慮されることがあります。

  • ビタミンB2(リボフラビン)
    12歳以上で1日400mgが推奨されることがあります。
  • ビタミンD3、マグネシウム
    一部で有効性が示唆されていますが、エビデンスは限定的です。

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注意点と誤解されやすい点

  • トリガー(片頭痛の原因となるもの)の過度な制限(根拠のない食事制限など)は、かえってストレスとなり逆効果です

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例え話:非薬物療法の考え方

小児片頭痛の非薬物療法を「キャンプの焚き火」に例えると分かりやすいでしょう。
薬物療法が「燃え上がった炎を消す消火器」だとするなら、
非薬物療法は
「周りの枯れ葉を片付け、風除けを作って、火が燃え広がらないように環境を整える作業」
です。
日頃から地面を湿らせ(水分補給)、
燃えやすい薪を整理しておく(規則正しい生活)ことで、
小さな火種が落ちても、大火事(激しい発作)になるのを防げます。

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学校・保健室との連携

思春期の片頭痛は、欠席・早退・不登校の原因になり得ます。
「怠け」「甘え」と誤解されることも少なくありません。

  • 医師からの情報提供
  • 個別頭痛管理計画の共有
  • 痛みが軽いうちに対応する(Act when mild)
  • 暗く静かな場所での休息

学校との連携が、症状の慢性化を防ぎます。

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受診を検討すべきタイミング

次のような場合は、一度受診をご検討ください。

  • 頭痛の回数や強さが増えてきた
  • 学校を休みがちになっている
  • 市販薬が効きにくくなってきた
  • 頭痛への不安が強い

「異常があるかどうか」ではなく、
「これからどう付き合うか」を一緒に考えることが受診の目的です。

よくあるご質問(Q and A)

中学生(12歳)未満でも受診できますか?

当院では、鎮静を行わずにMRIで器質的疾患の除外が可能となる年齢のみを対象とさせて居て頂いております。頭痛外来に関しては、原則中学生以上(12歳以上を目安)の患者様を対象とさせて頂いております。

発熱がある頭痛でも相談してよいですか?

発熱や感染症を伴う頭痛は、小児科受診を優先してご検討下さい。まずは感染症に関連した頭痛の可能性の評価が重要です。

CTは撮像できないのでしょうか?

当院にはCTは設置しておりません。MRIは二次性頭痛(脳腫瘍・水頭症・血管病変など)の除外に有用であり、問診と神経学的診察を重視した評価と組み合わせて診療を行っています。

未成年は1人で受診できますか?

未成年の患者様の受診は原則保護者様とご一緒にお願いします。治療方針や薬の説明、適応外使用の可能性などを含め、十分な説明を行うためです。

市販薬が効きにくい時はどうすればよいですか?

鎮痛薬(イブプロフェン、アセトアミノフェン)で効果不十分な場合は、ガイドラインで推奨されているトリプタン系など、次の選択肢を検討することがあります。重要なのは、頭痛のタイプを整理し、頓用薬の回数が増えていないかを確認し、必要に応じて予防薬や非薬物療法を組み合わせて治療を整えることです。

予防薬はどのタイミングで考えるべきですか?

思春期の片頭痛治療は、薬物療法・生活習慣指導・心理的配慮を組み合わせた包括的アプローチが基本です。頓用薬の使用が増えたり、学校生活への影響が大きい場合には、ロメリジンやアミトリプチリンなどの予防薬を含めて整理することがあります。

受診をお考えの方へ

下高井戸脳神経外科クリニックは、東京都杉並区・世田谷区・渋谷区西部を中心に、京王線(下高井戸・明大前・桜上水・千歳烏山・上北沢・八幡山・芦花公園・笹塚・代田橋)、京王新線(幡ヶ谷・初台)、東急世田谷線(松原・山下・宮の坂)、小田急線沿線(代々木上原・東北沢・下北沢・世田谷代田・梅ヶ丘・豪徳寺)、渋谷区西部(上原・大山町・西原・本町)から通院しやすい立地にある脳神経外科専門クリニックです。
頭痛・めまい・しびれ・脳梗塞後の経過観察などを中心に、日本脳神経外科学会専門医である院長が、診察から検査結果の説明まで一貫して対応しています。
初診枠をご予約のうえご来院いただいた場合、症状と診察所見から医学的に必要と判断され、かつMRI検査の禁忌事項がない場合には、当日中にMRI検査および結果説明が可能です(土曜日も17時開始枠まで初診予約が可能です)。
詳しいアクセス方法は、サイト内のアクセス案内をご覧ください。
ご予約はこちらから。

参考文献

本記事は、思春期の片頭痛診療に関する国際的なエビデンスおよび日本の診療ガイドラインに基づいて作成しています。
思春期の片頭痛に関しての記載は、以下の主要文献を参考にしています。
• Headache Classification Committee of the International Headache Society. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia. 2018;38(1):1–211.
• Abu-Arafeh I, Howells R. Management of migraine in children and adolescents. Handb Clin Neurol. 2024;199:487–502.
• Greene K, Irwin SL, Gelfand AA. Pediatric Migraine: An Update. Neurol Clin. 2019;37(4):815–833.
• Seng EK, Martin PR, Houle TT. Lifestyle factors and migraine. Lancet Neurol. 2022;21(10):911–921.
• 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン2021.医学書院.

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本記事の執筆者について

本記事は、下高井戸脳神経外科クリニック院長であり、
日本脳神経外科学会専門医・医学博士の 髙橋 里史 が執筆しています。
脳神経外科専門医としての臨床経験と、
国際的な総説論文・標準的教科書に基づき、
専門的な内容を一般の方にも分かりやすく整理しています。

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