片頭痛(偏頭痛)の“前兆”について
片頭痛(偏頭痛)の“前兆”について
―その頭痛、10年我慢していませんか?

本記事のイメージ画像は、生成AIを用いて制作したイメージです。特定の人物を示すものではありません。
片頭痛:その有病率および適切な診断・治療の重要性について
片頭痛は、世界的に見ても有病率が高く、個人の生活の質(QOL)を著しく低下させる疾患です。
片頭痛の有病率と推移
片頭痛は世界人口の約15%が罹患していると推定されている非常に有病率が高い疾患です。Global Burden of Disease(GBD)研究によると、2016年時点で約10億人が片頭痛を有していたと推定されています。
日本における15歳以上の方を対象とした全国調査では、片頭痛の年間有病率は8.4%(前兆のない片頭痛5.8%、前兆のある片頭痛2.6%)と報告されています。性別・年齢別に見ると、特に20〜40歳代の女性で有病率が高く、30歳代女性では約20%、40歳代女性では約18%に達します。これは、働き盛りであり、かつ家庭でも中心的な役割を担う世代に片頭痛が集中していることを意味しています。
下高井戸脳神経外科クリニックへ頭痛のご相談を頂く患者様の中には、「長年付き合ってきた頭痛だけれど、いつもと違う症状が出てきたから」と片頭痛の前兆に関する変化をきっかけにご来院される方が少なくありません。
以前のブログで前兆の中で最も頻度が高く、かつよく知られている「閃輝暗点」についてご紹介いたしました。
⇒「閃輝暗点(せんきあんてん)の正体と危険なサイン」
今回のブログ記事ではその他の片頭痛の前兆についてご紹介させていただきます。
下高井戸脳神経外科クリニックには京王線(京王新線および都営新宿線)沿線、東急世田谷線沿線、京王井の頭線沿線をはじめ、多くのご来院者様から頭痛のご相談を頂いております。
詳細な問診と神経学的診察で頭痛の原因に迫り、必要時かつ患者様がご希望の場合には原則当日中に院内でMRI検査を行い結果をご説明し、治療方針をご提案します(最近マグネットネイルを付けていらっしゃるため、MRIが施行できないケースがままございます。MRIをご検討の場合には大変お手数ですがマグネットネイル等、磁場の影響を受けるものは外してご来院いただけますとスムーズなご案内が可能になりますのでご協力ください)。
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目次
- まずは物語風の架空の典型症例から
- 片頭痛の“前兆”は、閃輝暗点だけではありません
- 1. 典型的前兆の3大症状
- 2. 他の前兆との関係
- 3. 典型的前兆の重要な特徴(診断のルール)
- 4. 「典型的前兆」に含まれない前兆
- それ以外の前兆(脳幹性・運動性・網膜性)
- まとめ
- Q and A
- 受診をお考えの方へ
- 参考文献
- 本記事の執筆者について
まずは物語風の架空の典型症例から
視野がかける
Aさんは、下北沢のカフェでノートパソコンを開いていました。
午後2時。
窓際の席から差し込むやわらかな光。
エスプレッソマシンの音と、静かなジャズが心地よく流れています。
仕事の資料を確認しながら、いつものように画面に目を落とした、その瞬間でした。
「あれ…?」
文章の中央が、欠けて見えました。
文字の一部が、消しゴムで消されたようにぽっかりと抜けています。
瞬きをしても戻りません。
数分後、その空白の周囲に、ギザギザとした光の波が現れました。
キラキラと輝きながら、ゆっくりと右側の視野へと広がっていきます。
視界の右半分が、まるで水面越しに見ているように歪み、遮られていく。
怖さというよりも、「ああ、またか」という感覚が先に立ちました。
20代半ばから、年に数回、同じことが起きているからです。
母も若い頃、「光が見えて寝込む頭痛持ちだった」と話していました。
約15分ほどで、光は静かに消えていきました。
しびれが“上がってくる”
安心したのも束の間。
今度は右手の指先が、チクチクとし始めました。
細かな静電気のような感覚です。
それは止まることなく、ゆっくりと手首、肘へと上がり、
やがて右側の口元、舌へと広がりました。
広がっていく、しびれ。
その後、しびれていた部分は感覚が鈍くなりました。
突然起きたわけではなく、
数分かけてじわじわと進んでいきます。
約20分ほどで、しびれは自然に消えていきました。
言葉が、出ない
オンライン会議の時間になり、
イヤホンをつけて画面越しに挨拶をしようとした瞬間でした。
言いたい単語が出てきません。(*1)
頭の中では文章ができているのに、
うまく言葉として形にならない。
「あの…えっと……」
呂律が回らないのではなく、
言葉そのものが抜け落ちていく感覚。
画面の向こうで相手が心配そうに見つめています。
それも、15分ほどで自然に回復しました。
そして、頭痛
午後3時頃。
今度は左のこめかみが、ズキンズキンと脈打ち始めました。
前兆とは反対側です。(*2)
光がまぶしい。
音が響く。
吐き気が込み上げる。
立ち上がると痛みが悪化します。
Aさんはカフェを後にし、帰宅して暗い部屋で横になりました。
「やっぱり片頭痛だ…」
*1 「言語症状」には、話せないだけでなく、書いてある文字が理解できない(読めない)、あるいは書けないといった症状も含まれますが、呂律が回らない(構語障害)という症状は含まれません
*2 前兆(身体症状)と反対側の頭に頭痛が起こることが多い(脳の病変側と頭痛側が一致するため)とされていますが、実際の臨床では頭痛が両側に出ることもあれば、前兆と同側に出ることもあり、サイドは決まっていません。




*本記事に掲載している漫画は、Google Gemini(nanobanana)を使用して作成したイメージです。
作中に登場する患者様は架空の人物であり、特定の実在患者様を示すものではありません。
本漫画は片頭痛の前兆の典型的な経過を分かりやすく説明することを目的としたものであり、
実際の症状や経過には個人差があります。
同様の症状がみられる場合には、自己判断されることなく、医療機関での評価をおすすめします。
片頭痛の“前兆”は、閃輝暗点だけではありません
片頭痛の前兆の中でも最も頻度が高く、一般的であるのが「典型的前兆」です。主に「視覚」「感覚」「言語」の3つの症状で構成され、運動麻痺(脱力)や後述の脳幹症状と呼ばれる症状を含まないのが特徴です。
1. 典型的前兆の3大症状
国際頭痛分類第3版では、以下の3種類の症状が定義されています。片頭痛の患者様はこれらを単独で、あるいは連続して経験します。
① 視覚症状(Visual symptoms)
最も頻度が高く、前兆のある片頭痛患者の90%以上にみられます。
- 閃輝暗点(scintillating scotoma): 最も特徴的な症状です。視野の中心付近に「ジグザグの光」や「ギザギザした要塞のような模様」が現れ、それが徐々に周辺(右または左)へ広がっていきます。詳しくは以前のブログ「閃輝暗点(せんきあんてん)の正体と危険なサイン」をご覧ください。
- 陽性徴候と陰性徴候: キラキラした光や幾何学模様が見えること(陽性徴候)と、その跡や視野の一部が見えなくなること(陰性徴候・暗点)が混在するのが特徴です。
- 進行: 数分から数十分かけてゆっくりと拡大し、やがて消えていきます。
② 感覚症状(Sensory symptoms)
視覚症状の次に頻度が高い症状です。
- チクチク感(Paresthesia): 針で刺されるようなチクチクした感覚(陽性徴候)。
- 感覚鈍麻(Numbness): 感覚がなくなる、痺れてわかりにくくなる感覚(陰性徴候)。
- 広がり方(March): 通常、片側の上肢(手や指)から始まり、数分から数十分かけて腕を上がり、同側の顔面、口の周り、そして舌へと波及していくのが典型的です。
- 感覚の移動: 「チクチク感」が移動した後に、その場所が「感覚鈍麻(しびれ)」として残ることがあります。また、最初から感覚鈍麻だけが生じる場合もあります。
③ 言語症状(Speech/language symptoms)
視覚症状や感覚症状と並んで「典型的前兆」を構成する3つの症状の一つですが、頻度はそれらに比べて低いのが特徴です。
言語症状(Speech and/or language symptoms)の特徴
国際頭痛分類第3版において、この症状は単に「話しにくい」だけでなく、脳の言語中枢の一時的な機能不全による症状を指します。
・主な症状:
- 失語(Aphasia): 最も一般的な形態です。
- 喚語困難: 言いたい言葉が出てこない。
- 錯語: 言い間違いをする(例:みかんと言おうとして「りんご」と言う、文字を読み間違える)。
- 理解障害: 相手の言っていることが理解できない。
これらの症状は、患者様にとって非常に不安な体験となりますが、前兆の一部として現れる場合は完全可逆性であり、通常は60分以内に完全に回復します。
・重要な区別(失語 vs 構音障害):
- 失語(Aphasia): 言葉の「意味」や「構成」が障害される症状で、典型的前兆に含まれます。国際頭痛分類第3版では常に「片側性」の症状として扱われます。
- 構音障害(Dysarthria): 舌や口の動きが悪くて「呂律が回らない」症状です。これは脳幹症状(脳幹性前兆を伴う片頭痛)に分類され、典型的前兆の言語症状とは明確に区別されるべき所見です。
2. 他の前兆との関係
言語症状が単独で現れることは非常にまれで、多くの場合は視覚症状や感覚症状を伴います。
- 出現の順序: 複数の前兆が連続して起こる場合、典型的には「視覚症状 → 感覚症状 → 言語症状」の順序で現れることが多いとされています。
- 症状の広がり: この順序で起こる場合、患者様は「まずキラキラが見えて、次に手が痺れてきて、最後に言葉が出にくくなった」と訴えることがあります。
一人の患者様において、また同じ片頭痛発作中において、複数の典型的前兆が起こることがあります
同じ発作で複数の前兆が起こる場合
国際頭痛分類第3版の診断基準では、1回の発作中に2つ以上の前兆症状が連続して起こることが認められています。
- 症状の順序: 複数の前兆が現れる場合、それらは通常連続して(in succession)視覚症状で始まり、続いて感覚症状、その後に言語症状が生じるという順序が多いですが、順序が逆転したり入れ替わったりすることもあります。
- 持続時間: 個々の前兆症状は5〜60分持続しますが、複数の症状がある場合は合計時間が長くなることが許容されます。例えば、3つの症状が連続して起こる場合、前兆全体の許容される最長持続時間は 180分(3×60分) となります。
一人の患者様が異なる前兆を経験することがあります
一人の患者様が、発作ごとに異なるタイプの前兆を経験することも一般的です。
- 併発の傾向: 視覚性前兆(キラキラが見えるなど)を持つ患者様の多くは、時に手足のしびれ(感覚症状)や言葉が出にくい(言語症状)などの症状も経験します。
- 逆のパターン: 逆に、感覚症状や言語症状を持つ患者様は、ほぼ常に(少なくとも何回かの発作においては)視覚性前兆も経験しているとされています。
このように、視覚、感覚、言語症状は相互に関連しており、これらを特別に区別せず、まとめて「典型的前兆を伴う片頭痛」として診断・分類します。
3. 典型的前兆の重要な特徴(診断のルール)
国際頭痛分類第3版の診断基準によると、単に症状があるだけでなく、以下の「現れ方」が非常に重要です。これらは、脳卒中(一過性脳虚血発作など)と区別する上でも大切なポイントです。
- 徐々に広がる: 少なくとも1つの症状は、5分以上かけて徐々に進展します(いきなり完成しません)。
- 持続時間: それぞれの症状は、5分以上60分以内で消失します。
- 連続性: 2つ以上の症状(例:視覚→感覚)が起きる場合、それらは連続して起こることがあります。
例:キラキラが見えて30分で消え、その後に手の痺れが20分続く、など。この場合、前兆全体の時間は60分を超えても許容されます(3つの症状があれば最大180分まで)。 - 片側性: 少なくとも1つの症状は、身体の片側だけに現れます(視覚症状も視野の片側に出ることが多いです)。
- 完全可逆性: 症状は跡形なく完全に消えます。
- 頭痛との関係: 前兆の最中、あるいは前兆が終わってから60分以内に頭痛が始まります。
4. 「典型的前兆」に含まれない前兆
国際頭痛分類第3版において、「典型的前兆」は前述の視覚、感覚、言語の3つの症状のみで構成され、運動麻痺(脱力)や脳幹症状を含まないものと定義されています。これらに含まれない前兆は、以下の3つの特殊な片頭痛サブタイプとして分類されます。
脳幹性前兆(Brainstem aura)
- 定義: 以前は「脳底型片頭痛」と呼ばれていました。脳幹に起源を持つ症状が現れますが、運動麻痺は伴いません。
- 症状: 以下の完全可逆性症状が2つ以上現れる必要があります。
- 構音障害(Dysarthria): 呂律が回らない(言葉が理解できなかったり話せない失語とは区別されます)。
- 回転性めまい(Vertigo): ぐるぐる回るめまい(揺れるようなめまいやふらつきとは区別されます)。
- 耳鳴り(Tinnitus)
- 難聴(Hypacusis)
- 複視(Diplopia): 物が二重に見える。
- 運動失調(Ataxia): 感覚障害によらないふらつき。
- 意識レベルの低下(Decreased level of consciousness): GCS 13以下。
運動前兆(Motor aura)
定義:「片麻痺性片頭痛(Hemiplegic migraine)」として診断されます。前兆に運動麻痺(脱力)が含まれるのが特徴です。- 特徴: 通常、視覚、感覚、言語症状も伴います。運動症状は一般的に72時間未満で消失しますが、数週間続くこともあります。
- 分類: 家族歴のある「家族性片麻痺性片頭痛(FHM)」と、家族歴のない「孤発性片麻痺性片頭痛(SHM)」に分けられます。
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網膜前兆(Retinal aura)
定義: 「網膜片頭痛(Retinal migraine)」単眼性の視覚障害が繰り返し起こります。 - 症状: 片方の目だけに現れる閃輝(キラキラ)、暗点(見えない部分)、または失明(視覚消失)。
- 区別: 典型的な視覚前兆は両眼の視野の片側に現れる(同名性)のに対し、網膜前兆は片方の目だけに現れる点が異なります。
-
典型的前兆以外の前兆を伴う片頭痛におけるトリプタンの位置づけ
これらの「典型的前兆」に含まれない前兆を伴う片頭痛に対しては、トリプタンの使用には慎重な判断、あるいは禁忌(使用不可)の措置が取られます。
- 原則として使用しない(禁忌・非推奨): ガイドラインおよび添付文書上、片麻痺性片頭痛、脳幹性前兆を伴う片頭痛、網膜片頭痛に対し、トリプタンは禁忌または推奨されないとされています。
- 理由: トリプタンには血管収縮作用(5-HT1B受容体刺激)があるため、頭蓋内血管の攣縮や虚血(脳梗塞など)のリスクを増悪させる懸念があるためです。
- 詳細な見解:
- 片麻痺性片頭痛: 脳血管の攣縮が関与している可能性や、脳梗塞との鑑別が必要なため、使用しないことが推奨されています。
- 脳幹性前兆を伴う片頭痛・網膜片頭痛: 同様に、血管収縮によるリスクを考慮し、禁忌とされています。
- 代替治療: これらの特殊な片頭痛の急性期治療には、血管収縮作用のない薬剤の使用が考慮されます。
5. 頭痛を伴わない場合
典型的前兆の症状だけがあり、その後に頭痛が続かないケースもあります。これは「典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの(1.2.1.2)」と診断されます。年齢を重ねるにつれて「頭痛自体は軽くなったのに、前兆だけが残る」こともあり得ますが、特に中高年で初めて起きた場合や、これまでと型が違う場合には、一過性脳虚血発作(TIA)などとの鑑別が重要になります。
まとめ

本インフォグラフィックは、当ブログ本文の内容をもとに、生成AI(NotebookLM)を活用して作成した補足資料です。
片頭痛の前兆の一般的な特徴を、視覚的に分かりやすく整理することを目的としています。
すべての症状や状況を網羅するものではなく、診断や治療に代わるものではありません。
症状に不安がある場合や、いつもと違うと感じた場合は、自己判断なさることなく医療機関へご相談ください。
片頭痛の“前兆”は、決して「キラキラが見えるだけ」の症状ではありません。
視覚症状、感覚症状、言語症状が、数分かけてゆっくりと広がり、そして完全に元に戻る―
このような一連の症状であっても、片頭痛の典型的前兆として説明されます。
一方で、
- いきなり完成する症状
- 60分を大きく超えて持続する症状
- 完全に回復しない症状
- 明らかな運動麻痺や意識障害を伴う症状
これらは片頭痛以外の疾患(脳梗塞・一過性脳虚血発作など)を慎重に鑑別すべき重要なサインです。
国際頭痛分類第3版および頭痛診療ガイドライン2021に基づけば、
- 典型的前兆(視覚・感覚・言語)
- 脳幹性前兆
- 片麻痺性片頭痛
- 網膜片頭痛
は明確に区別され、それぞれ治療方針、とくにトリプタン使用の可否も異なります。
「いつもの片頭痛」だと思っていても、
- 前兆のパターンが変わった
- 頻度が増えた
- 40歳以降に初めて前兆が出た
- 頭痛が伴わなくなった
といった変化があれば、一度きちんと整理して評価する価値があります。
片頭痛そのものは、一般的には生命に直結する疾患ではありません。
しかし、正確に診断されずに放置されることで、生活の質を長年にわたり損なう疾患です。
前兆の「型」を理解することは、不安を減らし、
本当に注意すべきサインを見極めるための第一歩になります。
「これも前兆なのだろうか?」
そう感じたときは、一度きちんと整理してみることをお勧めします。
長年我慢してきた頭痛でも、診断がつけば治療の選択肢は広がります。
不安を抱えたままにせず、どうぞ一度ご相談ください。
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Q and A
キラキラが見えましたが、これはすべて片頭痛の前兆ですか?
必ずしもすべてが片頭痛の前兆とは限りません。数分かけてゆっくり広がり、5〜60分以内に完全に消失する場合には、典型的前兆の可能性があります。一方で、突然視界が欠ける、急に真っ暗になる、あるいは持続して改善しない場合には、脳血管障害や眼科疾患など他の原因の可能性も考慮する必要があります。症状の時間経過が重要な手がかりになります。
前兆があっても頭痛が起こらないことはありますか?
そのようなケースもあります。国際頭痛分類第3版では「典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの」という分類があり、前兆症状だけが出現し、その後頭痛が起こらない場合もあります。ただし、特に40歳以降に初めて前兆と考えられる症状が出現した場合には、一過性脳虚血発作(TIA)などとの鑑別が必要になることがあります。
手のしびれが徐々に顔に広がりました。脳梗塞ではないでしょうか?
数分かけて“移動するように広がる”しびれは、片頭痛の感覚前兆でもみられることがあります。一方で、突然完成し、そのまま固定される麻痺やしびれの場合は脳梗塞の可能性も否定できません。症状の出方や持続時間、完全に回復するかどうかが判断のポイントになります。
言葉が出にくくなりました。これは危険ですか?
言いたい言葉が出てこない、言葉を理解しにくいといった症状は、片頭痛の言語前兆でもみられる可能性がありますが、特に初回の場合には脳梗塞やその前段階である一過性脳虚血発作の可能性も念頭に置いた慎重な評価が望まれます。
前兆が60分以上続きました。大丈夫でしょうか?
国際頭痛分類第3版では、1つの前兆症状は通常60分以内とされています。それを明らかに超えて持続する場合や、症状が完全に回復しない場合には、典型的前兆以外の可能性も考慮する必要があります。経過を観察しつつ、医療機関での評価を検討されることをお勧めします。
前兆が視覚→しびれ→言語と順番に起こりました。珍しいですか?
珍しいことではありません。典型的前兆では、視覚症状に続いて感覚症状、さらに言語症状が連続して起こることがあります。それぞれの症状が5〜60分以内で消失し、全体として可逆的であれば、典型的前兆の可能性が考えられます。
片目だけが見えにくくなりました。これも片頭痛の前兆ですか?
片目だけの視覚障害は「網膜片頭痛」の可能性がありますが、網膜片頭痛の頻度は高くありません。単眼性(片方の眼だけ)の視覚障害は、網膜動脈閉塞や他の眼科疾患の可能性もあるため、慎重な鑑別が必要になります。両眼の視野の片側が見えにくい場合とは区別して考えることが重要です。
手足に力が入りにくくなりました。これも前兆ですか?
運動麻痺や脱力を伴う場合は、「片麻痺性片頭痛」の可能性も鑑別として考えられます。ただし、脳梗塞などの緊急疾患との鑑別が極めて重要になります。突然の片側の脱力が出現した場合は、脳梗塞等を念頭に可及的速やかな医療機関受診が望まれます。
脳幹性前兆とは何ですか?
構音障害、回転性めまい、耳鳴り、難聴、複視、運動失調、意識レベルの低下が2つ以上組み合わさる場合に、脳幹性前兆の可能性があると考えます。このタイプでは通常の典型的前兆とは分類が異なり、治療方針も慎重に検討されます。特に初回発作では詳細な評価が重要です。
いつ受診すればよいのでしょうか?
以下のような場合には、一度医療機関で整理して評価を受けることが勧められます。
・初めての前兆かもしれない症状
・症状の型がこれまでと異なる
・持続時間が長い(60分を大きく超える)
・完全に回復しない
・40歳以降に初めて出現した
診断が明確になることで、不安が軽減する可能性があります。症状のパターンを把握して頂き、正しく評価することが、適切な治療につながる第一歩と考えております。
受診をお考えの方へ
片頭痛の前兆を疑う症状がある場合、まずは症状の推移と頭痛との関連を丁寧に整理することが大切です。
そのうえで、必要に応じてMRIで頭蓋内疾患(脳梗塞・腫瘍・血管異常など)を除外することが安全な診療につながると考えています。
下高井戸脳神経外科クリニックは、京王線・東急世田谷線 下高井戸駅徒歩2分にある脳神経外科専門クリニックです。
杉並区・世田谷区・渋谷区西部を中心に、京王線・京王新線・京王井の頭線・東急世田谷線・小田急線・都営新宿線沿線から通院しやすい立地です。
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初診枠をご予約のうえご来院いただいた場合、医学的に必要と判断され、MRIの禁忌がない場合には、当日MRI検査および結果説明が可能です(土曜日も17時開始枠まで予約可)。
片頭痛の前兆が疑われる症状でも、繰り返す場合やパターンが変わった場合にはご相談ください。
受診の流れ
① 初診WEB予約
② ご来院・問診
③ 必要に応じてMRI/MRA
④ 結果説明と治療方針のご提案
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本記事の執筆者について
本記事は、下高井戸脳神経外科クリニック院長であり、日本脳神経外科学会専門医・医学博士の 髙橋 里史 が執筆しています。
ガイドラインをはじめ、国際的な総説論文・標準的教科書に基づき、専門的な内容を一般の方にも分かりやすく整理しています。


