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脳梗塞の前兆|一過性脳虚血発作とは?

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脳梗塞の前兆|一過性脳虚血発作とは?―京王線・東急世田谷線・京王井の頭線・小田急線沿線で脳梗塞が心配になる症状が出た方へ

 

脳梗塞の前兆|一過性脳虚血発作とは?
―京王線・東急世田谷線・京王井の頭線・小田急線沿線で
しびれ・めまいなどの脳梗塞が心配になる症状が出た方へ

突然のしびれなど脳卒中の前兆を心配する男性のイメージ

本記事のイメージ画像は、生成AIを用いて制作したイメージです。特定の人物を示すものではありません。

「突然の手足や顔のしびれ」
「急にろれつが回らなくなった」
「しばらく力が入らなかった」
「片目が一時的に見えにくくなった」
「ふらつきやめまいが出た」

いつもとは違うこのような症状が出現し、数分から数十分で治まると、

「少し疲れていただけかもしれない」
「もう治ったから様子を見よう」

と考えながらも、少し心配になることがあると思います。

実際に、このような症状は一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる、脳梗塞の前触れであることがあります。

TIA(一過性脳虚血発作)は、症状が一時的であるため「すぐに治る軽い病気」と誤解されがちですが、実際には早期に脳卒中(脳梗塞など)へ進展する危険性が高いことが報告されています。

2000年にJAMA誌に発表された研究では、救急外来でTIAと診断された患者において、その後90日以内に脳卒中を発症するリスクは約10.5%でした。さらに、90日以内に脳卒中を発症した方の約半数は、TIA発症から最初の2日以内に脳卒中を起こしていたことが示されています。

また、2007年にLancet誌に報告されたEXPRESS studyでは、TIAや軽症脳卒中の患者に対して迅速な評価と早期治療を行うことで、早期の脳卒中再発リスクを大きく低下させられることが示されました。実際、この研究では90日以内の脳卒中再発リスクが10.3%から2.1%へと大幅に低下しています。

これらの研究結果から分かるのは、TIAを疑う症状が出たら、たとえすぐに症状が消えたとしても放置せず、医療機関で評価を受けることが大切であるということです。

下高井戸脳神経外科クリニックでは、その日の症状をその日のうちに評価することを大切にしています。
2026年3月時点では一診体制かつ予約優先制のため救急対応はできませんが、当日予約でも、問診・神経学的診察のうえ、必要に応じてMRIを施行し、結果をその日にご説明しています。

この記事では、脳卒中の前兆として現れうる症状、一過性脳虚血発作(TIA)の考え方、脳梗塞の主な病型、そして受診の目安について分かりやすく解説します。

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目次

脳卒中の前兆として現れることがある症状

一過性脳虚血発作(TIA)の症状は、血栓などによって一時的に血流が低下した血管の領域によって異なります。ここでは、代表的な症状を解説します。

突然の脱力・しびれ

TIAでは、突然、片側の顔・腕・脚に力が入りにくくなったり、しびれや感覚の鈍さが出たりすることがあります。
これは主に前方循環、すなわち頸動脈系の虚血でみられる症状です。

特に、運動麻痺を伴う発作は、その後の脳卒中発症リスクが高い危険なサインと考えられています。

ろれつが回らない・言葉が出にくい

言葉の障害には、大きく分けて2つあります。

ひとつは失語で、言葉が出にくい、言葉が理解しにくいといった症状です。主に優位半球の虚血で起こります。
もうひとつは構語障害で、ろれつが回らない、発音がはっきりしないという症状です。脳幹や小脳の虚血、あるいはラクナ梗塞関連の症状としてみられることがあります。

これらの言語症状も、脳卒中に進行する可能性がある重要なサインです。

めまい・ふらつき

めまいやふらつきは、主に椎骨脳底動脈系、すなわち後方循環の虚血でみられることがあります。
ぐるぐる回るような回転性めまいだけでなく、歩行時のふらつきや、バランスが取れないといった症状として現れることもあります。

めまいの原因には、耳の病気など脳以外のものも多く含まれます。そのため、ろれつが回らない、手足のしびれ、歩けないほどのふらつきなどの症状を伴う場合には、特に注意が必要です。

一方で、頻度としては多くはありませんが、めまいのみの症状で受診され、診察時にも明らかな神経学的異常所見が認められないにもかかわらず、小脳梗塞が見つかる患者様もいらっしゃいます。
そのため、めまいだけであっても、場合によっては注意が必要な症状であると考えられます。

片目が一時的に見えなくなる(黒内障)

片目が一時的に暗くなる、ブラインドが下りるように見えなくなる症状は、一過性黒内障(amaurosis fugax)と呼ばれます。
これは頸動脈のプラークや血栓の一部が眼動脈へ流れ込み、一時的に網膜への血流が低下することで起こります。

数分程度で改善することが多いものの、頸動脈の動脈硬化や狭窄を示す重要な警告サインです。

症状が治っても放置してはいけません

これらの症状は、数分から数十分で完全に消えることがあります。
しかし、症状が消えたからといって安心はできません。

一時的でも脳卒中の前兆である可能性があるため、早めの受診が大切です。

脳梗塞の主な病型を知っておきましょう

脳梗塞にはいくつかの病型がありますが、代表的な分類としてTOAST分類が知られています。
TOAST分類では、脳梗塞は以下の5つに分類されます。

  1. アテローム血栓性脳梗塞
  2. 心原性脳塞栓症
  3. ラクナ梗塞
  4. その他の原因による脳梗塞
  5. 原因不明の脳梗塞

ここでは、代表的な3つの病型について解説します。

ラクナ梗塞(小さな血管の障害)

ラクナ梗塞は、脳の深部を栄養する細い血管が障害されて起こる脳梗塞です。
高血圧との関連が強く、高血圧や糖尿病が背景にあることが多い病型です。

典型的には、

  • 片側の手足の麻痺
  • しびれなどの感覚障害
  • 構語障害
  • 運動失調を伴う麻痺

などで発症します。

一方で、失語や失認などの大脳皮質症状を伴いにくいのが特徴です。

アテローム血栓性脳梗塞(太い血管の動脈硬化)

アテローム血栓性脳梗塞は、頸動脈や頭蓋内主幹動脈などの太い血管に動脈硬化が進み、狭窄や閉塞を起こすことで発症します。

症状は、

  • 徐々に進行する
  • 階段状に悪化する
  • 同じ領域のTIAを繰り返した後に脳梗塞へ進展する

といった経過をとることがあります。

また、頸動脈病変が背景にある場合には、一過性黒内障との関連も重要です。

心原性脳塞栓症(心臓から血栓が飛ぶタイプ)

心原性脳塞栓症は、心臓内で形成された血栓が脳の血管へ飛んで詰まるタイプの脳梗塞です。
代表的な原因は心房細動です。

この病型は、

  • 突然発症する
  • 発症した瞬間に症状が完成しやすい
  • 比較的重篤になりやすい

という特徴があります。

症状としては、

  • 重度の片麻痺
  • 失語
  • 視野障害
  • 意識障害

などがみられ、広範囲の脳梗塞になりやすい病型です。

救急要請を検討するサイン

脳の太い血管が詰まる大血管閉塞(LVO)は、広い範囲の脳に障害を起こしうる重篤な状態です。
このような場合には、血栓溶解療法や血栓回収療法など、時間制限のある専門的治療が必要になることがあります。
下高井戸脳神経外科クリニックでは血栓溶解療法も血栓回収療法も施行することができません。

次のような症状が突然出現した場合には、迷わず救急要請を検討してください。

重度の片麻痺・脱力

顔の片側がゆがむ、片側の腕や脚に全く力が入らないといった症状です。
特に顔や腕に強い麻痺が目立つ場合は注意が必要です。

言葉が全く出ない・理解できない

ろれつが回らないだけでなく、言葉が全く出ない、相手の話が理解できないなど、コミュニケーションが成り立たなくなる症状は緊急性が高いと考えられます。

眼球の向きの異常や強い視野障害

両眼が片側を向いたまま動かない、あるいは視野の半分が急に見えなくなるような症状も、大きな脳梗塞のサインであることがあります。

片側への強い注意障害や重度の感覚障害

片側の空間に全く気づかない、自分の半身を認識できない、片側の感覚がほとんど分からないといった症状も重症例でみられることがあります。

時間との勝負になる治療があります

発症から4.5時間以内であれば血栓溶解療法が、一定の条件を満たせば6時間以内、場合によっては24時間以内まで血栓回収療法が検討されます。
「様子を見る」よりも、まず救急要請を考えて頂くことが大切な場合もあります。

TIAから脳梗塞に進行させないために医療機関でできること

EXPRESS studyが示した最も重要なポイントは、TIAを疑う患者様の病態を迅速に評価し、必要な予防治療を早期に開始することの重要性です。

迅速な検査と評価

TIAや軽症脳卒中では、症状が治っていても脳卒中リスクの高い状態が続いていることがあります。
そのため、画像検査や心電図、頸動脈評価などを含めた迅速な評価が重要です。

予防治療の早期開始

原因に応じて、

  • 抗血小板薬
  • スタチン
  • 降圧薬
  • 抗凝固薬

などを適切に開始することが、再発予防につながります。

必要に応じて外科的治療を検討

頸動脈の高度狭窄などがみつかった場合には、頸動脈内膜剥離術など、外科的治療が必要になることがあります。

EXPRESS studyが示したこと

TIAや軽症脳卒中に対して、待たせずに検査し、必要な予防治療を早く始めることで、90日以内の脳卒中再発リスクを大きく減らせることが示されました。

下高井戸脳神経外科クリニックでできること・できないこと

その日に心配な症状を、その日のうちに評価することを大切にしています

下高井戸脳神経外科クリニックでは、突然のしびれ、ろれつが回らない、めまい、ふらつき、視覚症状など、脳卒中の前兆が心配な症状に対して、可能な限りその日のうちに評価することを大切にしています。

  • 当日予約でも問診・診察に対応
  • 必要に応じてMRIを施行
  • 結果をその日に説明

という流れで対応しています。

当院でできないこと

一方で、当院は一診体制・予約制のクリニックであり、救急搬送の受け入れや脳卒中センターのような急性期治療には対応していません。
また、

  • 採血結果は翌日以降
  • 心電図検査や心機能検査は院内では対応困難

といった限界もあります。

症状に応じて次の一手をご提案します

診察やMRI所見を踏まえ、

  • 急性病変の評価
  • 必要時の高次医療機関への紹介
  • 外来での投薬加療の開始

をご提案します。

抗血小板薬、降圧薬、スタチンなど、外来で開始可能な予防治療については必要があれば即日処方できます。

迷ったときは早めにご相談ください

「こんな軽い症状で受診してよいのだろうか」と迷われる方も少なくありません。
しかし、TIAは軽くみえても重要な警告サインであることがあります。

脳のことで不安な症状があるときは、どうぞ早めにご相談ください。

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よくあるご質問(Q&A)

脳卒中の前兆にはどのような症状がありますか?

脳卒中の前兆として現れることがある症状には、突然の手足や顔のしびれ、片側の脱力、ろれつが回らない、言葉が出にくい、ふらつき、めまい、片目が一時的に見えにくくなるといったものがあります。
これらの症状は数分から数十分で自然に治まることもありますが、一過性脳虚血発作(TIA)であることがあり、早めの受診が大切です。

脳梗塞の前兆は一時的に治っても大丈夫ですか?

いいえ、一時的に症状が治っても安心とは限りません。
TIAは症状が短時間で消えることがありますが、その後に脳梗塞へ進展することがあります。

一過性脳虚血発作(TIA)とはどのような病気ですか?

脳や目の血流が一時的に低下することで、しびれ、脱力、ろれつが回らない、言葉が出にくい、視覚障害などが一時的に現れる状態です。
脳梗塞の警告サインとなることがあります。

ろれつが回らないのは脳梗塞のサインでしょうか?

突然ろれつが回らなくなった場合は、脳梗塞やTIAの可能性があります。
しびれ、脱力、めまいなどを伴う場合は特に注意が必要です。

手足のしびれだけでも脳卒中の前兆のことはありますか?

はい、あります。
特に片側の手足や顔に突然しびれが出た場合は、脳卒中やTIAの症状として現れている可能性があります。

片目が一時的に見えなくなるのは脳梗塞と関係がありますか?

はい、関係することがあります。
一過性黒内障は頸動脈病変と関連し、脳梗塞の前兆となることがあります。

脳梗塞にはどのような種類がありますか?

代表的には、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症の3つがあります。
原因によって予防治療が異なるため、病型を見極めることが大切です。

脳卒中の前兆が心配なときは受診した方がよいですか?

はい、症状が軽くても相談をおすすめします。
TIAは短時間で治っても、その後の脳梗塞予防に重要なサインになることがあります。

参考文献

TIAの早期リスクと迅速な治療・管理体制

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本記事の執筆者について

下高井戸脳神経外科クリニック院長 髙橋 里史

本記事は、下高井戸脳神経外科クリニック院長であり、日本脳神経外科学会専門医・医学博士の髙橋 里史が執筆しています。
ガイドライン、国際的な総説論文、標準的教科書に基づき、専門的な内容を一般の方にも分かりやすく整理しています。

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