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MRIとCTの違いは?脳の異常を最も見逃さない検査とは

検査・診療のご案内

― 脳神経外科診療における病態や発症時期による「MRIとCTの使い分け」

頭痛、めまい、しびれ、物忘れなど、
「頭の中で何か起きているのでは…」と心配になり、当クリニックを受診される患者様から、よく次のような質問をいただきます。

「MRIとCTはどう違うのですか?」
「私の場合はどちらの検査が必要ですか?」

本記事では、脳神経外科医が MRIとCTの違い・使い分けを、専門的な内容を含めつつも、わかりやすい言葉で整理してお伝えします。


最後に、当院がMRIを導入し、MRIを優先した診断体制にしている理由についてもご説明いたします。


■ 1.MRIとCTの“仕組みの違い”

MRI:磁石と電波を使って「脳の水分の変化」をとらえる検査

MRIは、強い磁石の中で身体の水分子(特に水素)が整列する性質を利用し、そこに電波(ラジオ波)を当てて返ってきた信号を画像化する検査です。
*ラジオ波は “電離作用を持たない” 電磁波 なので、DNA損傷や発がんリスクが問題になる放射線(X線・γ線)とは異なります。
MRIでは、撮り方(シーケンス)を切り替えることでさまざまな脳内情報を得られます。

  • FLAIR:白質病変、炎症
  • DWI:急性期の脳梗塞
  • T2*:微小出血
  • TOF-MRA:造影剤を使わず血管描出

<MRIの特徴>

  • 放射線を使わない(=被ばくゼロ)
  • 脳の細かい変化がよくわかる
  • 白質病変、炎症、むくみ、微小出血の評価が得意
  • 血管の狭窄・閉塞を造影剤なしで確認可能

脳外科の初診で、「脳に明らかな異常があるかどうか」を正確に見極めるために有用な検査です。


● CT:X線で「密度の差」をとらえる検査

CTは、X線を体の周囲に照射し、通り抜けた量の違いをコンピュータで画像化する検査です。

<CTの特徴>

  • 数十秒〜数分で終了する非常に速い検査
  • 骨がよく写るため骨折に強い
  • 急性期の脳出血の検出に優れる
  • 救急・外傷では必須
  • 放射線による被ばくがある
  • 骨に囲まれた後頭蓋窩(小脳・脳幹)は評価が困難である(この点に関してはMRIが圧倒的に有利です)

意識障害がある患者様、呼吸・循環が安定しない重症の患者様等、緊急性が高い状況では「まず命に関わる異常をすぐ見つけたい」ため、CTの迅速性が重要になります。


■ 2.MRIとCTのメリット・デメリット比較

項目 MRI CT
使うもの 磁石・電波 X線(放射線)
被ばく なし あり
検査時間 15〜30分 数十秒~数分
得意 脳梗塞(急性期)、白質病変、炎症、微小出血、腫瘍、血管 急性出血、骨折、外傷
費用(3割負担) 約5,500〜6,000円 約4,000〜4,500円
注意点 閉所恐怖症、体内に磁性体金属があると不可 被ばくがある

慢性的な症状(頭痛・めまい・しびれ・物忘れなど)の初期評価では、情報量が多く、造影剤を使用せずとも血管評価まで可能なMRIが適していることが多いと考えられます。

一方で、

  • ペースメーカー、人工内耳、眼内金属片等
  • 体内に磁性体の金属
  • 強い閉所恐怖症

などの条件がある場合はMRIが困難となることがあります。

※費用は検査の目安です。
初診・診察等を含むと、初診でMRI検査を行った場合は1万円弱であることが一般的です。


■ 3.MRIとCTで“見えるもの”の違い

● MRIが得意なもの(=細かい脳の変化)

  • むくみ(浮腫)
  • 微小出血
  • 白質の異常(動脈硬化性の変化など)
  • 頭痛・めまいの原因となる炎症
  • 脳梗塞の初期変化(急性期脳梗塞の診断に有用なDWIは発症後早期の時点から脳梗塞の検出が可能ですが、発症直後では偽陰性となることもあり、臨床症状との総合判断が重要になります)
  • 脳腫瘍の性質・広がり
  • 血管狭窄・閉塞(造影剤なしでMRAによる血管形態の評価が可能)

MRIで一般的に血管形態を評価するのに使用されるTOF-MRAは、狭窄部を過大評価して描出する傾向があります。血管の詳細な評価では、造影剤を使ったCT(3D-CTA)の方が解像度が高いです。
そのため、MRAで判断が難しいが、診断が重要な病変が疑われる際は、CTでの3D-CTAをお勧めすることがあります。


● CTが得意なもの(=救急・骨)

  • 急性期脳出血
  • 頭蓋骨骨折
  • 外傷直後の評価
  • 硬膜外・硬膜下血腫
  • 造影CTでの血管評価(3D-CTA:高解像度)

外傷直後はまずCTが第一選択ですが、同じ外傷でも微細な脳損傷(DAI)などはMRIの方が感度が高いため、必要に応じてMRIを行います。
MRIでは骨の評価が困難であるため、当院ではMRIに加えてレントゲンで骨の評価を行うことで外傷後の評価を行っています。


■ 4.疾患ごとのMRIとCTの使い分け

● 外傷

  • 初期:CTが有用
  • 詳細評価:MRI(白質・軸索損傷の評価)

● 脳梗塞

  • 救急搬送ではまずCTで出血の有無を確認
  • 脳梗塞の検出はMRIが圧倒的に有利

● 脳腫瘍

腫瘍の広がり・性質は MRIがゴールドスタンダードです。


■ 5.当院が「まずMRIから」評価する理由

下高井戸脳神経外科クリニックでは、MRIを中心とした診療体制を整えています(当クリニックにCTはありません)。
私がこれまで勤務していた基幹病院では、MRIは常に予約が埋まっており、
「本当はMRIで詳しく見たいけれど当日はCTで後日MRI…」
という状況もままありました。

当院は、急な頭の症状の原因を”迅速かつ可及的正確に”評価することを最優先にしています。
そのため、MRIの撮影枠を多く確保し、可能な限り当日にMRIが撮影できる体制を整えています。


✔ MRIのメリットを最大限活かせるから

① 被ばくゼロで安全
慢性的な頭痛・めまい・しびれなどの症状に対して、放射線なしで精密に評価できます。

② 造影剤なしで血管が見える
腎機能が心配な方、造影剤が不安な方も安心して検査頂けます。

③ 微小な脳の変化まで写せる
認知症評価・慢性頭痛・白質病変・微小出血の評価に有利です。

④ 骨の評価はレントゲンを追加
骨折の有無はレントゲンで確認可能です。
必要に応じて近隣医療機関へCTを依頼し、当日中にCTの結果説明を行うことも可能です。


■ まとめ

  • MRIは、脳の細かい異常を幅広く評価できる検査
  • CTは、急性出血や骨折を迅速に評価できる検査
  • 当院ではMRIを導入し、慎重かつ迅速に診断
  • MRIでは血管の評価が造影剤なしで可能
  • 骨の評価はレントゲンで対応
  • 外傷や急変など、必要時は近隣医療機関へCT撮影を依頼

当院は東京都区部西部、京王線(千歳烏山、上北沢、八幡山)、東急世田谷線沿線(松原、山下、豪徳寺)、杉並区南部(下高井戸、永福、和泉、浜田山)、世田谷区北東部(赤堤、松原、羽根木、下北沢、梅が丘、代田)、渋谷区西部(笹塚、幡ヶ谷、代々木上原)からアクセス良好な地域の脳神経外科専門クリニックです。

頭痛・めまい・しびれ・物忘れなど、
脳に関するご不安がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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